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全国大会常連の高川学園サッカー部は なぜ「部署制度」に力を入れるのか?〜江本孝監督インタビュー〜

 

(記事中の写真は全て高川学園サッカー部広報部が運営するTwitterより)

全国各地の大学、高校サッカー部で徐々に取り組むチームが増えている「部署制度」。
この取り組みを高校サッカー部としていち早く取り入れ、取り組んできたのが山口県の強豪高川学園でした。

今回は「部署制度」をなぜ始めたのか?その目的とするところ、実際に見えた選手の変化などを高川学園サッカー部監督にお伺いしました。(聞き手 澤田健太、江原まり、編集 江原まり)

↓本文は写真の下に続きます↓



高川学園サッカー部が部署制度を始めたきっかけとは?

2017年の夏頃、筑波大学サッカー部の部署制度の取り組みをテレビ番組の中で観ました。
そのときに「自分が求めているものに近いな」と感じて、携帯電話にメモをとりました。

その後、チームのバスで移動する際にキャプテン(当時 富山智史)に話をしてみたら彼も「それ、やりたいです」と。

そこからどんな風にやったら良いのか、選手達と話し合ったり、試行錯誤して今の形(※編集部注「おもてなし部」「農業部」「分析部」「強化部」「用具部」「グラウンド部」「広報部」「総務部」「審判部」「生活部」など10部署で活動)になりました。

実際にどの子がどんなことをしているか、私は知らないんですよ。
各部署のリーダーからの報告や全体のミーティングで「今、この部署はこういうことをしているんだな」という風に掴んでいる形です。

各部署には毎週ミーティングをして活動の振り返りとそれに対する課題を見つけ、リーダーが報告することを求めています。
各部署のリーダーでライングループを作っていて、そこにリーダー達がミーティングの結果を投げ込んでいく。
他の部署はそれをみて、他の部署が何をやっているかを感じながら活動していると思います。

子どもたちが自分たちからアクションをおこしていくことが必要ですね。

スタートから順調に進んだのですか?

スタートした時には「自分自身を変える、成長させる」ということを目的に置いていたのですが、1年半くらいやったところで、頭打ちというかペースダウンした時がありました。

そこで気付かされたのが「自分自身を変えるためには自己満足ではダメ。誰かが評価してくれないと頑張れないのだな」ということです。

大人もそうだと思うのですが、「評価=誰かが頑張っている姿を見てくれている」と頑張れることがありますよね。
子ども達も同じだなと。
誰かが頑張りを見てくれていて、評価してくれないとやりがいがなくなっていくということがあるのではないでしょうか。

例えば、農業のことをやっていても中々モチベーションが上がらない、おもてなしに関してもただやっている。

子どもたちは、自分たちの行動に何かしらの見返りが欲しいものです。

見返りはなにかというと、例えばおもてなしをしていて「ありがとう」といわれるその一言をもらえることや、遠征で宿泊にきたチームに布団を用意してあげる、そんな中で対戦相手のチームと凄く仲良くなれるということなどですね。

こういうことが見返りになっています。ご褒美です。

我々社会人だと仕事をした分給料(お金)が入ってきますが、逆に「ありがとう」といってもらえることがお前たちの給料だよ、と。
人の心を動かすことができるような人になろうねと言っています。

もっともっと皆さんに活動を見てもらえるようになるのが、この子たちは嬉しいのではないかなと思います。

頑張ってやっていれば褒める。褒められると嬉しいからまた頑張れる。
SNSで活動の発信をしているのも同様の理由です。
最初は活動において自分たちだけでやっていれば良いのではないかと思っていましたが、「大勢の人に知ってもらうことで子どもたちのモチベーションが上がるのでは?」という助言をいただいて、ツイッターやフェイスブックでの外部への発信を始めました。

実際に外部への発信をしてみると、子どもたちのモチベーションアップに繋がりましたし、SNSで情報を発信することの勉強にもなりました。
個人情報の扱いや表現の仕方など、周囲への気遣いを学ぶことに繋がっています。

 

高川学園サッカー部における部署制度の意義とは?

部員数が多いチームでは「スタメン、セカンドチーム以外試合に出られないじゃないか」という声があります。
指導者が一番悩むのは試合に出せなくて、「出させてあげれなかったなあ」と思う場面です。

試合に出ることができない選手が応援だけで終わっていくのはどうなのかと。
選手たちは高校サッカーをやるために入部してきているので、より高校サッカーに付加価値を高める必要があると感じていました。

「部署制度」はサッカー部の中の役割分担にもなるし、個人個人に責任を持たせることもできる。
​そして責任を持つということは自分がその組織の一員であるということ自覚させることにもなる。そこが一番大事なのではないかと思っています。

部署制度導入でどう変わった?

「気遣える」とか「色んなところに目が届く」とかそういう人になって欲しいと思ってずっとやっていた取り組みです。

部署制度の活動を通して、周りのことに対して気づく力が高まりました。
やんちゃする子が、責任や役割を持つようになってから周りのことを考えて動けるようになったりもしましたね。

卒業する選手が

「選手権には出られませんでした、でも、高川学園サッカー部でこんなことを学べました。こういう力をつけました。」

という気持ちで巣立って行ってくれると嬉しいですね。
みんなが「高川学園サッカー部で成長できた」と感じるようになれるのが理想です。

次のステージに向けて「自分の存在価値」を部署制度の活動を通して作り上げていってほしいです。

高校卒業後には大学に進学、あるいは就職という道を歩んでいくわけだけども、高川でやっているおもてなし部(部署制度)では社会人になってから発生する、気を使わないといけないような場面を学べます。

例えばお客さんが来た場合はコーヒーを出すなどです。
今はおままごとのようなレベルかもしれませんが、経験になります。

分析部では自チームの分析を行う。
​自分たちの課題や、今後の取り組みをどうするのかということを自分たちでしっかりと行う。
分析については主に筑波大学さんから学んだことです。​

今は大学でもどこでもパソコンを使うと思います。
これからは、どこのチームでも映像分析を行うことが当たり前になっていく中で、ある程度の入り口を高校サッカーで経験させておいていいのではないかと考えています。

監督自身には変化がありましたか?

部署制度を取り入れて、私自身も働き易くなったと感じています。
子どもたちが前向きにアクションを起こすので、教員としてやりがいが感じられます。

自分が1人でやっていた作業を生徒達と分担するという一面もあるので、作業自体は減りますが、生徒がやっているアクションを見届けることが必要なので、自分で「動く」ことから「観る」ことに変わるという感じでしょうか。

実際に自分が動いていた時よりも、「観る」ことが主体になったことで、以前よりも冷静に客観的にチーム活動を観ることができるようになったと思います。

今後について

「部署活動」の取り組みは全国的にも必要になってくるのではないかと感じています。
選手権も100回開催を迎えるということで節目ということもあり、新たな部活動、高校サッカーのやり方を考えなければならないのではないでしょうか。

子ども達もサッカーだけではない「何か」を求めているような気がしているんです。
時代の変化、選手の変化があるようにも感じるのです。

高川学園の部署制度に関していえば、どんどん活動を大きくしようとは思っていないです。
自分たちの身の丈にあったやり方でやっていけたら良いと思っています。

サッカー部ですから、サッカーで子ども達が成長する、大事な試合で成長する、やりがいを感じる。サッカーを中心にして、人としてとか心の成長がある。

サッカー部の活動に対してこうした取り組みは、無理をするべきものではないと考えています。
ストレスなくできる範囲で、人数が増えたらもう少しこの幅までやってみようかとか、人数が減少すれば、それに合わせて活動の幅も減少してやってみようかとか、そこは身の丈に合わせた形でやっていけたら良いと思っています。

どの学校が部署制度をやるにしても、そのチームに合ったバランスでやってみると良いのではないでしょうか。
部署の数にしても、うちは10ですが、5つでも3つでも良いと思います。

そしてその地域に合った活動を取り入れて、地域に根ざしていけると良いのではないでしょうか。
農村部であれば高川学園のように農業のお手伝いや、海が近いなら海に関連した活動とか。
都会なら都会に合った方法で地域に関わっていくと良いと思います。

そういう組織を作っていくのが、指導者にとっては面白く、やりがいがありますし、勉強になると感じています。

最後に(編集後記)

部署制度を開始する際に、選手達と話し合い、相談しながら決めていったという江本監督。
普段から強くトップダウンで言うべき時は言い、生徒に意見を聞く時は聞く、そして部署制度については一切強制をしないのだそうです。

子どもたちが自らアクションを起こすことが重要な取り組みですから、監督の「対話」の姿勢や生徒達に委ねる姿勢が、子ども達がやりがいを持って取り組める秘訣のように感じました。

高川学園サッカー部データ

・2019年度全国高校サッカー選手権大会 2回戦進出
・2019年度全国高校サッカー選手権大会県予選 優勝
・2019年度県高校総体 3位

・2018年度全国高校サッカー選手権大会県予選 準優勝
・2018年度山口県高校総体 優勝
・2018年度全国高校総体ベスト16

・2017年度山口県高校総体 優勝
・2017年度全国高校サッカー選手権大会山口県予選 優勝

選手

135名
※2020年4月3日現在

スタッフ

監督:江本 孝
部長:河村 直樹
コーチ:岡田 浩平、上之園 典宏
トレーナー:上原 雅貴、阿南 達也

輩出Jリーガー

・安部 雄大(1992年度卒)
・藏川 洋平(1995年度卒)
・横山 聡 (1997年卒)
・高松 大樹(1999年度卒)
・中山 元気(1999年度卒)
・藤田 泰成(1999年度卒)
・伊藤 淳嗣(2001年度卒)
・中原 貴之(2002年度卒)
・片山 朗 (2003年卒)
・ハウバート ダン(2005年度卒)

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寄稿者プロフィール

統括副編集長/戦略事業部江原 まり
長野県出身。
ライター歴9年。
子育て系メディアにて、主に教育、引越し、子育て全般についてのコラムを100本超執筆。
2016年からジュニアサッカーNEWSにて執筆開始。
2017年10月より副編集長、2019年4月より統括副編集長/戦略事業部。

自身もサッカー少年の母です。
保護者目線で「保護者が知りたい情報」を迅速にお届けするため、日々奮闘中。

いろいろな方の貴重なお話を直接聞けるこのお仕事にわくわくさせてもらっている毎日です。

できるようになりたいこと、勉強したいことが山のようにあります。
一つずつチャレンジしていきたいと思います。
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