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第100回選手権全国大会出場『近大和歌山』偏差値70集団、サッカー特待無しで全国に挑める理由

※本文は2019年に公開されました

2017新人戦和歌山県大会2017選手権予選和歌山県大会2018インターハイ和歌山県予選で準優勝し、過去には全国高校サッカー選手権大会出場7回、全国高校総体出場11回の実績を持つ、和歌山のサッカー強豪高校近大和歌山高校

2019年度(平成31年度・令和元年度)
和歌山県高校サッカー新人大会 第3位
第98回全国高校サッカー選手権大会 和歌山県大会 第3位
和歌山県高等学校総合体育大会サッカー競技<男子の部> ベスト8

同校は二つの学科がある共学高校ですが、学科の偏差値はそれぞれ「普通科ADコース 71」「普通科スーパーADコース 70」と県内トップクラスの進学校としても知られています。

私立高校ですが、サッカーでの特待入学者は無し。
これだけの高偏差値集団がサッカーでも県内トップクラスの強豪校として実績を残しているのには、何か勉強とサッカーの両立の仕方に秘訣があるのでは?
今回はサッカー少年の保護者が気になる「サッカーと勉強の両立の仕方」について、近大和歌山高校サッカー部の藪真啓監督と現役選手の方々にインタビューしてきました!

藪真啓監督 インタビュー

近大和歌山流 サッカーと勉強の両立法

—これだけ偏差値が高い高校で、サッカーも全国大会出場を視野に入れている学校は全国的に見ても、珍しいと思います。サッカーでの特待生(推薦枠)入学者はいらっしゃらないのでしょうか?

藪真啓監督
サッカーでの特待生制度はありませんね。

—そうなんですね、皆さんしっかり勉強して入学してきた生徒さんなんですね。
毎日のサッカー部の練習は何時間くらいですか?

藪真啓監督
平日は2時間半程度の練習時間です。

—サッカー部の皆さん、普段は毎日自宅で何時間くらい勉強されているのでしょう?(個人差があると思いますが)

藪真啓監督
何時間と答えるのは難しいですが、成績の良い生徒は、学習時間を固定化しているようです。
毎日、朝早く登校して始業前に勉強するなど、学習を習慣化していることが多いです。

—なるほど、毎日決まった時間帯に確実に勉強時間を確保しているんですね!
監督はサッカーと勉強の両立についてどのような考えをお持ちですか?

藪真啓監督
高いレベルでサッカーと勉強の目標達成を目指すことは簡単なことではないと思っています。
でも、それを目指し、追求することが近大和歌山サッカー部のプライドであり、価値であると考えていますね。
生徒たちは時間的にも精神的にも余裕がなくなることもあると思います。
しかし、やり方を工夫し、自らの努力で乗り越えていくことで人として成長し、将来にもつながっていくのではないでしょうか。

—指導者の皆さんから、選手の皆さんへ「勉強しなさい」というような声かけは日ごろからされているのでしょうか?

藪真啓監督
 基本的に勉強は個人の目標に向けてするものと考えているので「勉強をしなさい」とは言いませんね。
しかし、「近大和歌山サッカー部だから勉強をする」という気風があり、伝統や雰囲気が自然と「勉強もしっかりとやる」ように生徒を導いてくれていると感じます。

—高校サッカー部は長期の休み期間中に、勉強時間の確保が難しい場合も多いですよね。
例えば、遠征や合宿などの時にも近大和歌山サッカー部の皆さんは勉強もしているのでしょうか?
どういうタイミングで勉強しているのですか?

藪真啓監督
 まず、遠征や合宿に勉強道具を持っていかない生徒はいないです。
移動中のバスの中や宿舎での空き時間を利用して子供たちが自主的に勉強を行っていますね。

—移動中のバスの中も有効活用ですか!
合宿や遠征先に勉強スペースがあるかどうかの確認をすると伺いました。サッカー部の皆さんで揃って「〇時から勉強の時間」のように、活動計画に組み込まれているのですか?

藪真啓監督
 はい、過去に体育座りをした膝や階段を机代わりに勉強している姿を見かけたことがありまして。
それからは宿舎に勉強が出来るスペースがあるか確認して、机などがない場合は机をバスに乗せていくこともあります。

勉強をサッカー部の活動計画に組み込んでいるようなことはなく、基本的に各自に任せています。
逆にコンディションのことを考えて、夜遅くなりすぎないように何時まで勉強したいかを確認して部屋割りをすることはあります。

—本当に選手が自主的に勉強をしているんですね!逆に夜遅くまで勉強しすぎてコンディションを崩さないように配慮することが監督のお仕事とは・・・目からウロコです。

勉強をしたくなる声掛けを教えてください!

—子どもに勉強もさせたいけれど「サッカーで疲れた」と子どもが言って勉強をせずに困っている保護者も多いと思います。
どのように声かけをしたら、前向きに勉強をするように導けますか?

藪真啓監督
 
サッカーには、うまくなりたい、試合で勝ちたいなど子供たちの中に練習をする理由があります。でも勉強をする理由をもっていないのではと感じます。

まずは勉強の必要性を話すこと、自分の将来の可能性をひろげるために勉強をすることが大切だと真剣に話すことが必要だと思います。

私なら、こう言います。
「お金を貯めておかないと、いざ欲しい物が出来た時にそれを買う事が出来ないよね、それと一緒で、学力を貯める(勉強する)ことをしておかないと、欲しいもの(志望校や就きたい仕事、ここでサッカーがしたいなどの希望)ができたときに買う(合格や採用される)ことができない。
そうなれば自分が困るんじゃないか、と言います。

真剣に話をして、子供がなんとなくでも良いので勉強をやろうと思えたら、習慣化するために、勉強時間を固定します。

子供と相談して、学校から帰って練習に行くまでの1時間とか、練習後は集中力が続かないのであれば、早起きして1時間とか変動しない時間に勉強時間を決めます。
「勉強しなさい」と命令口調で言うのではなく「○時になったよ」とか「そろそろ○時だよ」と言ってサポートします。

うまくいかなければ、また勉強の必要性を話します。
目標や勉強する理由がない子供に頭ごなしに「勉強しろ」と言っても、効果的ではないと考えています。

—なるほど、確かに何か目的や目標があれば、前向きな気持ちで取り組めますね。
なぜ勉強することが必要なのか、そこを真剣に伝えることが大切なんですね!
勉強の成績とサッカーの上達には何か相関関係があるとお考えですか?

藪真啓監督
 一概には言えませんが、サッカーと勉強、どちらにも必要な集中力や粘り強さ、目的意識などの関係からかサッカーの上達と勉強の成績の向上は比例していると感じる部分が多いです。

自己の課題を客観視でき、自主練習に反映させてコツコツと続けている生徒はサッカーの上達だけではなく、勉強の面でも周囲から難しいと思われるような進路目標を達成しています。

近大和歌山のサッカーとは?

—近大和歌山さんが目指しているサッカーのスタイルはどのようなものでしょうか?やはり頭を使って崩していくというような面があるのでしょうか?

藪真啓監督
 観ること、関わること、状況判断などを大事にしています。
約束事はありますが、パターン化はしていないことも特徴だと思います。試合後に頭も疲れるような、考えて走るサッカーを理想としています。

—特にサッカー推薦などで選手を集めているわけでもなければ、体育コースのように運動能力に優れた選手が集まっているわけでもないのに、近大和歌山サッカー部が県のトップクラスに位置しているのには、やはり練習にも秘訣があるのだと思います。普段はどのような練習をされているのでしょう?

藪真啓監督
練習メニューは、長期、中期的な目標(課題)と、試合で出た課題(短期目標)を達成(克服)するべく作成しています。
まず練習案をノートに書いて練習を行い、練習後に練習内容を記録しながら振り返りをしています。
短期目標は1週間後のゲームで練習効果を確認することが出来ます
長期、中期の目標は大きく変わりませんが、その目標に向けたメニューは見直すように心掛けています。
試合で出た新しい課題は、もしかしたら練習内容による副作用のようなものではないかという視点からも考えます。
練習の中では観ること、タイミングを図ること、関わりを増やすことなどチームコンセプトに基づいて意識するように要求しています。
生徒にはメニューをこなすだけにならないように、課題意識、リアリティーを意識し集中力の高い練習ができるように働きかけをしています。
練習や試合が終わった後、もっと効果的な練習はできないかと考える毎日です。

現役選手の皆さんは近大和歌山サッカー部をどのように感じている?

—選手の方にもお聞きします。近大和歌山のサッカーと勉強を両立するスタイルは、実際、やってみてどうですか?

新3年 湯川凌世選手 MF の場合

僕は通学に1時間くらいかかるので、家で勉強をするというよりは、電車の通学時間を有効に使って勉強をしています。
また、自分で勉強する時間が限られているので、授業を大切にして、出来るだけそこで理解するようにしています。
勉強とクラブの両立は大変だと感じることもありますが、それが近大和歌山の良さであると思っているので、これからも勉強とサッカーにメリハリをつけて取り組んでいきたいと思っています。

新2年 浦貫介選手 MF の場合

僕がサッカーと勉強の両立で心掛けていることは、練習から帰ってきて疲れている時間に勉強するのではなく、早く寝て朝早くから学校の自習室で勉強するという学習方法です。

サッカー部は他のクラブや一般生よりも勉強する時間がどうしても少なくなってしまうので、バスの移動時間や遠征先のスキマ時間を見つけて勉強時間を確保しています。将来の夢のためにサッカーも勉強も成長できるように取り組んでいます。

—皆さん、自分の強い意思でサッカーと勉強の両立に取り組んでいるということが、とても良く分かりました。
特に自分なりの勉強方法を確立している点が素晴らしいですね。
自身の生活を客観視し、勉強の改善点を見つけ、実行する、という作業はそのままサッカーの上達のプロセスにも活かされており、それが近大和歌山サッカー部の強さの秘訣とも言えそうです。

全国のスポーツと勉強の両立に悩む学生の皆さんにとって、とても参考になるお話がたくさん聞けました。
藪監督、選手のお二人、ありがとうございました!

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    寄稿者プロフィール

    統括編集長/オウンドメディア事業部江原 まり
    長野県出身。
    ライター歴11年。
    子育て系メディアにて、主に教育、引越し、子育て全般についてのコラムを100本超執筆。
    2016年からジュニアサッカーNEWSにて執筆開始。
    2017年10月より副編集長、2019年4月より統括副編集長/戦略事業部。
    2022年1月より統括編集長/オウンドメディア事業部。

    自身もサッカー少年の母です。
    保護者目線で「保護者が知りたい情報」を迅速にお届けするため、日々奮闘中。

    いろいろな方の貴重なお話を直接聞けるこのお仕事にわくわくさせてもらっている毎日です。

    できるようになりたいこと、勉強したいことが山のようにあります。
    一つずつチャレンジしていきたいと思います。

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