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サッカーも勉強もボランティアも!自主性を引き出す部活環境とは?熊本学園大付属 厚晴仁監督インタビュー

地元熊本では「学付(ガクフ)サッカー部」で親しまれる熊本学園大付属高校サッカー部。
サッカーでは熊本県大会で常に上位入賞を視野に入れながらも、9割以上の生徒は4年制大学へ進学するというまさに文武両道を地で行く部として、中学生選手や保護者から高い注目を集める存在です。

「ただ試合に勝つことを目指すだけではなくて、価値ある勝ちを目指している」という同校サッカー部を率いる厚晴仁監督にお話をうかがいました。
(取材は電話で行いました。取材/文 江原まり)
本文中の写真提供:熊本学園大付属高校サッカー部

お話を聞かせてくれた人

厚 晴仁監督
熊本学園大付属高校保健体育教諭
公認B級コーチ

2001年 母校である熊本学園大付属高校のサッカー部監督に就任、現在19年目。
自身も同校サッカー部出身で、平成5年度第72回全国高校サッカー選手権大会に出場し、全国大会ベスト8進出。

「価値ある勝ち」を目指して

「気づく・発信・共有・徹底」をテーマに日々に活動に取り組んでいます。ただ試合に勝つことを目指すだけではなく、価値ある勝ちを目指してチーム全体でGOOD GAMEを追及しながら生徒たち自身がチームを作り上げています。
球蹴男児HP 熊本学園大付属サッカー部紹介より)

—今日はどうぞよろしくお願いします。まずは熊本学園大付属高校サッカー部(以下、学付(ガクフ)地元熊本ではこの愛称で呼ばれている)の掲げている「価値ある勝ち」を目指す、ということについて教えてください。
「勝利」を目指しているチームは多いと思いますが、勝利の中でも特に「価値ある勝ち」を目指すとしているのはどんな理由があるのですか?

厚監督
私たちにとって「全国大会出場を目指す」、「大会に優勝する」ということは目標です。
でも、目標であって「目的」ではありません。
チームの目的は、個人が意識して、選手として、一人の人間として成長すること。その上でチームも成長していくこと。
そしてその過程の中に「優勝」があると考えています。

日々の部活動を通して、一人一人が成長してくれたら自然とチームも良くなり勝ちに繋がっていくと思います。

これからは、組織のリーダーがトップダウンで物事を決めてそれにみんなが従っていくということが少なくなる時代になると思います。
ですから学付では5年ほど前から係を作って、一人一役を持って生徒が主体性を持って活動できるようにしてきました。
現在では飲料、用具、運営、ホームページ、ボランティアなど12の係があります。

決まったことを決まったようにするだけではなく、それぞれの役職(選手)へ「必要なこと、やるべきことのアイデアを出してほしい」「指導者にも主張すべき」と伝えて、意見を出し合える機会をつくっています。

例えば、ボール係は「ボールが古くなってきました。部員が何人いて、何個新しい物が必要なので買ってください。」というように自分たちで気づき考えて、指導者に働きかけてくる。
一人一人がやるべきことを考えて動く、というやり方です。

始めた頃は手探りでしたが、だんだんやり方も先輩から引き継ぎができるようになり、今の形に至りました。

—選手みなさんが何かしらの係を担当するのですか?

厚監督
はい、そうです。
うちでは学年関係なく、みんなでやろう!ということにしています。
社会に出てからもそうですよね。年が上になるほど仕事は大変になるのだから、学年が上だからやらなくて良いなんてことはないです。

でも物理的に無理なことはしないですよ。
例えば、グラウンドのライン引きなどは家が遠い人が担当すると、朝早く家を出ないと間に合わない。
家が近い人の方が便利ですよね。
そちらの方が効率が良いです。
話すのが得意な選手は、前に出て話すことが多い係が向いているし、黙々と作業できる選手は裏方の仕事で力を発揮する。また、苦手なことを克服したいというチャレンジ精神で係を選ぶ選手もいる。
そのように個人の特性やチャレンジ精神に合わせて、チームとして機能的に動けるように、自分で係を決めています。

今年はどうしてもキャプテンをやりたいという選手が2人いて、2人とも責任感が強く、リーダーができる人物だったので、最終的には2人でキャプテンをやることになりました。

—監督から選手の皆さんにはどんな働きかけをしているのですか?

厚監督
一番は生徒と話すことですね。
困っていることや言いたいことがあれば言いなさい、と言っています。
あとは、例えば映像の編集やHPの更新など、今までスタッフがしていたことに係を作って、生徒ができるようにする。
もちろん、私たち指導者も楽をしないで、新たなことにチャレンジしていくようにしています。
それで知見を広げて、それぞれの役職のリーダーに落とし込むようにしています。
人生はずっと学びを続けていくべきだと思いますから。

—一番身近な大人である監督が、自ら学ぶ姿勢を持っているのは生徒にとって刺激になりますね!
入ってきたばかりの1年生は最初は係活動に戸惑うこともありますか?

厚監督
1年生は最初はやらかしたりもしますよ笑
でもその失敗から学びます。
「失敗した時が成長するチャンスだよ」と言っています。

皆で決めたルールを守れなかったり、関わる人にリスペクトを欠く行動や言動もあったりしますが、失敗したからといって話を聞かずに叱ることはないようにしています。
「なんでこういうやり方をしたの?」
「なんでこういう考え方に至ったのか?」
「何がいけなかったのか?」
など、考えさせるような声かけをしてます。

怒られるから気をつける、怒られないようにやる、だと、そこに真の選手の成長は感じられないと思います。
また、今後の人生にも活きないのではないでしょうか。

サッカーの面でも、自分たちのシステムを考えて、選手交代を考えたり、選手から指導者へ意見を言えるようにしています。
意見していいし、「こうしたい」と要求していい。
でも、普段からやるべきことをしっかりやっているからこそ意見も聞いてもらえるし、要求も通るもの。
普段やるべきことをしっかりやってないと、なかなか意見を聞いてもらえないし要求も通らないですよね。

 

こうしたやり取りを通して、「自分の考えを理解、共有してもらうには、こういうやり方をしていけば良い」ということを体感して欲しいと思っています。
社会に出てからもずっと必要になることですから。
考えを共有し合い、最善のやり方を考える方法を早く覚えれば、色々な繋がりも生まれるしチャンスが増えると思うので、若いうちから身につけていってほしいのです。

—ボランティアにも積極的に取り組んでいるそうですね!

厚監督
はい、1年に4回くらい老人介護施設へいき、夏祭り縁日のお店を手伝ったり、お年寄りの方や子ども達と交流したりしています。

この写真は2回目にレクリエーションに参加した時のものです。
1回目の参加では介護士さんのレクリエーションに補助で入っただけだったのですが、2回目はレクリエーションを自分たちで考えてやってみようということになり、風船をサッカーボールに見立てて、お年寄りの方々とPK戦をするというアイデアを出して、それを製作してレクリエーションまでやっている所です。

この時は私自身が生徒たちのアイデアに感心させられました。

こちらは私の教え子が経営している有限会社ゆうしんさんの介護施設です。ゆうしんはユニフォームスポンサーもしてくださっています。

こうして教え子が運営している企業や卒業生と繋がりながら、生徒たちが社会活動に参加して、OBに役立ちながら生徒にも役立つという良い関係を築けていると思います。

昨年から今年にかけてはコロナで人と接する活動ができず残念だったのですが、今年はOBの人手不足で困っている畑に野菜の収穫のお手伝いにうかがいました。
そこで多少の報酬をいただいて、部の用品を購入したりすると、これもまた生徒にとっては用具を大切に使う意識が強くなるでしょうし、良い経験になると思っています。

こうした関係が広がって行くと良いですよね。

—「学付」といえば文武両道を目標としている学校で、サッカー部の練習時間も限られていると伺いました。その中で生徒たちはどのような工夫をして勉強をしているのでしょう?

厚監督
もともと学業も大切にしている生徒が集まるという学校の特性もあり、9割以上の生徒が4年制大学へ進学します。
比較的、自ら勉強する習慣のある生徒が入学してきますね。
学付にはスポーツ専願制度はありますが、スポーツ特待制度やスポーツクラスはありません。

サッカー部の練習時間は2時間程度です。
朝から課外授業を受けて、そのあと7時間授業、そして部活が始まるという1日のスケジュールなので、生徒たちは結構大変だと思います。
大体が17:45から19:45までが部活の時間で、20:00には下校という中で、隙間時間を活用して勉強しているようです。

例えばJRで通っている生徒はその通学時間を勉強に充てるなどですね。

年明けに試験があったのですが、その直前に大会がありました。
試合と試合の合間に時間が空いていたので「勉強道具を持っておいで」と伝えたら、みんな勉強道具を持ってきて、試合の間に勉強をしていましたね。

それから、曜日によって学校のスケジュール的に早く終わる日などがあるので、そうしたスケジュールを考えて1週間のどの時間にどういう勉強をするか決めている子もいます。

相対的に勉強を頑張ってやる生徒が7-8割いれば、残りの2-3割も引っ張ってくれますね。
そういう環境にあると思います。

1年生はなかなか3年生になった時のことが想像できないので、「1年生からしっかり勉強して良い評定を取っておくと、指定校推薦で進学するなどの可能性が広がる」ということを説明したりもします。

あらかじめ情報を伝えておいて、学ぶことが嫌じゃない状況を作ることが大切ではないでしょうか。
できたできないだけで評価せず、学ぶ姿勢を持っているか、どうか。
これからの時代は学校を卒業してもずっと学び続けることが必要になりますから。
試験前や節目節目に選手たちに話すようにしています。

それから本校では、総合学習の時間を使い、自分自身で興味、関心のあるものや、問題意識のあるものを見つけて、そこから新しいものを創り出す「深学科プログラム」に取り組んでいます。

例えば、部員の中には、本校には日体大のエッサッサのような学校独自の体操や準備運動がないので、それを作ることに取り組んでいたり、企業の方と協力してオリジナルのタピオカドリンクを作ったりしている生徒(上の写真/左下がサッカー部のキャプテン)もいて、学校の中でも部活動と同じ発想で物事に取り組んでいるんですよ。

—サッカーに全力で取り組むことはもちろんのこと、係やボランティア活動、そして学生の本分である勉強にも自発的に熱心に取り組む。
「これぞ部活の醍醐味」とも言えるバランスのとれた取り組みをされているのですね。
学付が掲げる「価値ある勝ち」の意味を理解することができました。

「学付に行ってサッカーがしたい!」と目標にする中学生が多いのも頷けます。
今日は貴重なお話をありがとうございました!

熊本学園大付属高校サッカー部戦績

◆全国高校サッカー選手権大会(第72回)
平成5年度 ベスト8
◆天皇杯全日本サッカー選手権大会(第90回)
平成22年度 2回戦進出

◆インハイ予選
令和 元年度 準優勝

過去の戦績

◆近年
2020年度 県下高校サッカー大会 男子(熊本県 高校新人戦)ベスト8
2020年度 県下高校サッカー大会 男子(熊本県 高校新人戦)

2020年度 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ熊本 1部リーグに所属
2020年度 高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ熊本 1部

2020年度 全国高校サッカー選手権大会熊本県大会ベスト8
2020年度 全国高校サッカー選手権大会熊本県大会

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寄稿者プロフィール

統括副編集長/戦略事業部江原 まり
長野県出身。
ライター歴9年。
子育て系メディアにて、主に教育、引越し、子育て全般についてのコラムを100本超執筆。
2016年からジュニアサッカーNEWSにて執筆開始。
2017年10月より副編集長、2019年4月より統括副編集長/戦略事業部。

自身もサッカー少年の母です。
保護者目線で「保護者が知りたい情報」を迅速にお届けするため、日々奮闘中。

いろいろな方の貴重なお話を直接聞けるこのお仕事にわくわくさせてもらっている毎日です。

できるようになりたいこと、勉強したいことが山のようにあります。
一つずつチャレンジしていきたいと思います。

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