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子どもたちに知ってほしい!サッカーの裏方職業についてのまとめ。③ホペイロ編

将来、子どもたちの職業の選択肢になるかもしれないサッカー選手以外の裏方の職業についてご紹介する第3弾です。

実業之日本社から出ている『サッカーの憂鬱』(能田達規著)をテキストに、サッカーの裏方の職業をシリーズでお届けします。

今回はホペイロ(スペイン語、英語ではエクイップメント、あるいはエクイップメント・マネジャー、エキップメントスタッフ)についてです。ホペイロという仕事について、少し深く掘り下げてみましょう。

「子どもたちに知って欲しい!」シリーズのバックナンバーまとめはこちら!

※データは2018年度のものです。

CASE3 あらすじ

場所はスタジアム裏。大きなトラックからボールでいっぱいのネット、用具を下ろしています。

「あれ?向こうのチームは選手が用具の用意をしていますね」と言う新米ホペイロに対し、ベテランホペイロは「日本では一部リーグのクラブでも専属のホペイロがいないことがある」と言います。

ホペイロとは何でしょう?

ホペイロとは何か

ホペイロ、エクイップメント(エキップメント)は「用具係」のことです。選手のために、練習や試合のロッカールームの準備、用具の準備、選手が着た練習着の洗濯やスパイクの手入れなども行います。

海外のトップチームならスパイク・ボール・ユニフォームにそれぞれ1人のホペイロがいるのが常識です。チーム全体では3~4人です。

日本のホペイロ普及率は?

J1のトップチームでホペイロを雇っているチームは2014年度のデータでは以下の通りです(公開されているデータのみ)。

東京ヴェルディ
川崎フロンターレ
FC東京
名古屋グランパス
柏レイソル
清水エスパルス
横浜Fマリノス

ホペイロ(エクイップメント)がいないチームでは、マネージャーがこの役を兼任しているケースが多いと言います。名称は違えど、ホペイロ的役割の人がいるチームはこのほかにもあるでしょう。

サッカーを支える職業としては様々なものがありますが、その中でもホペイロは一番「未確立分野」といえます。

日本のサッカーの歴史の中で一番最初にホペイロを取り入れたのは1990年代のことです。読売サッカークラブ(現・東京ヴェルディ)が初めでした。そのときのホペイロはブラジル人。その後、日本で初めてのプロ・ホペイロとして松浦紀典さんが東京ヴェルディに入ります。

日本初のホペイロとして現在も第一線で活躍する松浦さんは、「日本代表は日本で一番良い環境でやらなければいけないと思っている」と語っていました。「クラブのほうが良い環境の部分もあって、日本代表選手に負担をかけてしまっている」。

現在は日本代表にも「エキップメントスタッフ」がいますが、この記事が書かれた当時、日本代表にはホペイロ的な役割を果たす人がいませんでした。選手は自分で自分の用具のケアを行わなければならなかったといいます。この数年で日本のサッカーも海外に伍する制度になってきたことの表れかもしれません。

松浦さんのことについてはこちらをどうぞ
参考記事:本田圭佑や吉田麻也がほれ込んだホペイロ
名古屋・松浦紀典氏が語る“スパイク学”(参照サイト:Sportsnavi)

ホペイロはどんな仕事をしている?

さまざまな参考文献からホペイロの仕事を集めてみました(参考文献は末尾に紹介します)。

・練習や試合前のロッカールームの整備
・練習で使用するコーンやドリンクの準備
・練習のメニューによっていろいろな道具出し
・練習後の片づけ
・使用後のスパイクの手入れ
・使用後のユニフォームの洗濯
(縫ったり繕ったりする補修も含む)
・スパイクが傷んだら、選手が契約しているメーカーに連絡して注文

選手が、サッカーにだけ集中できるようにするのが日本のホペイロの仕事といってよいくらいの仕事量があります。

ひとりひとりロッカールームに座る位置も違えば、利き腕も違います。個々の選手に合わせてロッカーを整え、取りやすい場所にドリンクを置いておくのもホペイロの気配りです。

試合のロッカールームでは、外国人選手の位置にも気を使います。外国人選手には通訳が付きます。監督の近くに外国人選手を配置してしまったら、日本人選手の耳に監督と通訳の言葉がかぶって聞こえることになるからです。

一度にケアするスパイクは30足以上

朝9時から11時まで練習があるとしたら、遅くとも7時半にはロッカールームの整備を始め、練習後のスパイクの汚れを落として乾燥させると14時半~15時半くらいになります。そこからスパイクの調整、手入れ、同時進行で洗濯や明日の準備などをしていくとすべて仕事が終わるのは21時半くらいになるといいます。

ちなみに、一般的な天然皮革のスパイクのお手入れ方法のサイトをご紹介しておきます。もちろんプロはこれ以上の手入れを必要としますが、普通に履くのすらこれだけの手入れを必要とするのです。ホペイロは、以下の手入れにとどまらず、スタッドの調整や補修なども行います。

前後半でスパイクを履き替える選手もいれば、芝の状況によって試合のたびに違うスパイクを履く選手もいます。試合の中の自分の動きによってスパイクを履き替える選手もいるようです。雨が降ってくれば後半は雨用のスパイクを用意しなければなりません。

日本のホペイロとスペインのホペイロは違う?

単身スペインにわたり、「無給でいいからホペイロをやらせてほしい」とレアル・オビエドのホペイロになった人がいます。山川幸則さん。2000年から20年、FC東京のホペイロとして勤務しています。

スペインと日本のホペイロはずいぶん違うと言います。

例えば、今日の練習には半袖が用意されていました。選手は「寒いから長袖をくれ」と言います。

スペインのホペイロは、「(寒ければ)お前の気合で暑くなればいい」と言います。日本はそうはいきません。選手の要求も大変細かいし、それにすべて答えることが要求されるようです。

もちろんスペインでも、「それでも長袖をくれ」と選手が言えば、「しょうがないなあ」と言う感じで出してくれるようです。

それは、スペインのホペイロがちゃんと職業として確立し、尊敬されているからではないかと山川さんはインタビューの中で答えています。(参考文献は末尾に掲載しました)

こちらもご覧ください
Jリーグ黎明期に夢見た職業ホペイロ。飽くなき行動力が起こした奇跡(AMINO VITAL)

ホペイロの仕事のつらさとは…

『サッカーの憂鬱』CASE.3の中で、若いホペイロは「どうやら選手に嫌われているらしい』と思い込みます。試合に負けた選手の不機嫌さにさらされ、仕事も目いっぱいで目が回るほどの忙しさ。

サッカーが好きで入った仕事でも、試合を見られるのは前半の10分ほど。しかもその10分も、試合を見るのではなく芝の状態や天気を確認して後半に向かっての調整に備えるためのもの。観戦ではなく、チェックにすぎません。

それでもホペイロを続けるのはなぜでしょう?

「子を思う母のように」

ホペイロの仕事は、「チームがうまく回るために何をするか」というところに尽きるようです。選手がのびのびとプレーできるように尽くすさまは、子を見守る母親と言ってもよいでしょう。いえ、母親以上と言っても過言ではないかもしれません。

漫画の中では、ベテランホペイロの行ったスパイクの調整によって良いキックが出た時のことも描かれています。

一流の選手ほど、自分を支えてくれる存在に気を配ることができる心の余裕と、感謝の気持ちを持つもののようです。それは選手に限らず、どの世界でも同じです。

自分の調整したスパイクの調子が悪ければ、選手のパフォーマンスも落ちます。スパイクの調子が良ければ、良い結果に結びつくかもしれません。選手が気持ちよくプレーする環境を整えることがチームの今日の勝利に結びつくかもしれません。 
チームの勝利のために縁の下の力持ちに徹する存在がホペイロなのです。

ホペイロを目指すジュニア選手のために

実は、「こうなったらホペイロになれる」という正しい道はありません。日本ではまだホペイロが確立した職業ではないからです。ただし、スポーツ系の専門学校でエキップメントスタッフ養成が学べるところはあります。

例えば、川崎フロンターレのホペイロ、伊藤浩之さん。彼は、1997年から川崎フロンターレの全公式戦に関わった唯一の存在です。伊藤さんは前職が家具屋でした。家具屋とホペイロはずいぶん違うのですが、手探り状態の中積み上げた努力が今のフロンターレにつながっています。

参考記事:川崎フロンターレ ホペイロ伊藤浩之

就職活動中に、たまたまレイソルの用具係に欠員が出たので滑りこめたというのは、柏レイソルのエクイップメントの木村将文さん。初仕事はいきなり1か月の合宿だったそうです。

ホペイロになるためにスペインに渡った山川幸則さんは、清掃バイトとファミレスのウェイターを掛け持ちしてお金をため、パリで行われたフランス・ワールドカップを観戦に行きます。そこでサッカー関係者と知り合い、「雇うチームがあるかどうかはわからないけど、来てみる?」という誘いに貯金をはたいてスペインに渡ります。

東京ヴェルディのホペイロ、渡辺強さんは高校卒業後、プロ選手を目指してパラグアイに留学。帰国後、一般企業に入社したのですがサッカーに関わる夢を捨てきれず、クラブスタッフとしてヴェルディに入社します。

ホペイロになるのに大切なこと

ホペイロになるには「運や人脈は必要なことはたしか」と言いつつも、「人間関係を大切にする」「道具を大切にする」という当たり前のことをすることができることが何より大切だと渡辺さんは言っています。

練習や試合がどうなるか、この芝の状況だとスパイクはどうなるか、ホペイロは常に先を予想しながら動かなくてはいけません。観察する力、予測して動く力が必要な職業です。

参考文献

『サッカー馬鹿 海を渡る』(川内イオ著 水曜社 2009年1月)
山川さんの話はこの本に載っています。山川さんのほかにも面白い話がたくさんあります。本の帯は「給与未定 経験不問 蹴球7日」。ルビはありませんが、小学校高学年から読めると思います。

『愛するサッカーを仕事にする本』(フロムワン 2008年8月)
木村さんの話が載っています。本の帯には「蹴職読本」。巻末の仕事診断チャートがおすすめです。

『サッカーにかかわる仕事』(ほるぷ出版 2003年12月)
漫画付きなので、小学校中学年でも読めるかと思います。選手、審判、スタッフについて書いてあります。渡辺さんの話はこちらを参考にしました。

『ホペイロの憂鬱』(井上尚登 創元推理文庫 シリーズ)
推理小説です。「ホペイロ坂上の事件簿」としてシリーズになっています。

最後に

現在の先を予測する。それも、刻々と変わっていく状況に即座に対応することが求められる。

これは、サッカーのプレイそのものではないでしょうか。

もちろん、ホペイロになる人はサッカーが好きなことが大前提だと思いますが、「試合が見られない仕事だからサッカー好きの人は落とします」ということも少し前はあったそうです。

ヨーロッパでは、プロチームとアマチュアチームの一番の違いはホペイロの有無によるものだそうです。ホペイロという職業が確立し、尊敬を持って語られるとき、日本サッカーは新たな一歩を踏み出すのかもしれません。

寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWS統括編集長/事業戦略部水下 真紀
Maki Mizushita
群馬県出身、東京都在住。フリーライターとして地方紙、店舗カタログ、webサイト作成、イベント取材などに携わる。2015年3月からジュニアサッカーNEWSライター、2017年4月から編集長、2019年4月から統括編集長/事業戦略部。ジュニアサッカー応援歴17年。フロンターレサポ(2000年~)

元少年サッカー保護者、今は学生コーチの保護者となりました。
今年弊社が配信したハトマークは、思い出の大会でもあります(ブロックの予選リーグ勝ち星なしで敗退)

あのときちゃんと試合できるたくさんのチームの中で
「ゴールはどっち!?」ってコーチが悲痛に叫んでいたなあ、と…

お子さんのサッカーがもたらしてくれるたくさんの出会いと悲喜こもごもを
みなさんも楽しんでくださいますように。

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