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杉浦力斗選手もツエーゲン金沢に内定決定。内野流「感謝・人間力・メンタル」の育て方 興国高校 内野智章監督インタビュー【ジュニアサッカーNEWSが行く!】

2020年5月2日、杉浦力斗選手(興國高校)がツエーゲン金沢に加入することが内定しました。2月に3人の2年生が同時に横浜F.マリノスへの仮契約で話題になった興国高校から、新たなJリーガーが誕生しました。

▲杉浦力斗選手(IRIS生野U-12/ IRIS生野U-15 / 興國高校)写真:ツエーゲン金沢

Jリーガーを輩出し続ける興国高校の監督が内野 智章監督です。

就任当時の2004年、サッカー部員はたったの12名だったといいます。2020年2月現在、引退した3年生も入れた部員数は270名。冬の選手権では初の大阪府優勝を勝ち取りました。ここ8年間で出したJリーガーの数は15名を超え、現在も数名の部員がJリーグの練習に参加しています。「2020年度の目標はJリーガーを5人出す」と話してくれた興国高校監督・内野智章監督にインタビューを行いました。

編集部注:このインタビューは2020年2月に行われたものです。

▲右が内野監督

3選手のインタビュー記事はこちら

「富士山はエベレストの半分」

ーーー3人の入団内定、おめでとうございます。取材の中で、海外サッカーを意識している選手が多かったですが、興国高校サッカー部では毎年海外研修を実施していますね。これは海外サッカーへの視野を広げるためですか?

内野監督「はい、やっぱり世界を見せないと小さくまとまってしまうと思うので。僕はよく部員に言うんですが、世界で一番高い山はエベレスト、日本で一番高い山は富士山です。でも、富士山ってエベレストの半分の高さしかないんです。

エベレストに登ろう、と思っている人には富士山は練習台です。ですが、富士山に登ることをゴールとしている人って富士山よりもっと低い山で練習しますよね。それってほんとに力を伸ばしていることになるのかな、と思うわけです。

レスリングや柔道のような個人競技は、小さな選手のうちからオリンピックでの金メダル、『世界一』を目指して頑張っている。サッカーは全国優勝など日本一を目指している。日本人が世界一になっている競技と日本のサッカーの大きな差だと思います。高校生年代に目を向けると、U-16年代の優れた選手がU-18のカテゴリーで活躍する。翌年、U-17になった選手はやっぱりU-18のカテゴリーで活躍する。そのまた翌年、U-18になった選手がU-18のカテゴリーで活躍する。

それってほんとに選手の力を伸ばしていますか?

U-17になったらU-19、U-18になったらU-20で活躍していかないと、その選手のポテンシャルを伸ばしていることにはならないと思うんです。今回、高校サッカーという枠を飛び出して3人の選手が上のカテゴリーで活躍してくれること、僕はほんとによかったと思ってるんです。」

「世の中は平等じゃない」

ーーー興国高校サッカー部は、スタメンを決めるのも選手だと伺っています。どういうふうに決めているのですか?

内野監督「みんなの代表7名の投票で決めています。そして、みんなの代表は部員が『こいつになら決めてもらってもいい』と選んだ7人です。その7人に任せていますが、もちろん失敗することもある。2019年度のインターハイがそうでした。前日意見が分かれて、結局もともと考えていたのと違うメンバーになったんです。

その試合は「敗北」という名の失敗をしました。もちろん、その結果で衝突も生まれました。失敗のあとには喧嘩になります。でも、それを結果として受け入れたことがみんなを進化させた。失敗は次の試合に向けて活かせばいい。次の失敗をしないように活かせばいいんです」

ーーー超民主主義な決め方をするんですね。

内野監督「日本の教育は平等主義から来ている社会主義のようなものがあると思っています。特に学校では。でも、卒業して社会に出たら途端に資本主義でしょう。努力すれば評価される世界から、努力よりも結果を求められるようになってしまう。努力しても結果や成果がなければ評価されない世界になる。それが現実です。努力しても報われないこともある。それでも努力し続けるしかないその現実を高校くらいから少しずつ教えないといけません。

僕は入部したいという生徒に向かって、『入部したら競技スポーツに平等はない』と言います。そんなに努力しなくても結果を出す選手は試合に出れるかもしれないし、どんなに努力していても実力が達してこなければ試合には出れない。もちろん、理想は実力のある選手が努力することです。ですが、社会に出るとはそうではないことも多いじゃないですか。

僕は、選手たちが社会に出たあと活躍できるようにしたい。そのためには、高校と社会、大学が別世界なのではなく、連続したものである必要があると思います。感謝は言わなければ通じないし、失敗は繰り返してはいけないし、自分の頭で考えていかなければならない。高校生活はそうした練習をする場であってほしいと思っています。」

「謝罪することには意味がない」

ーーー興国高校の2年間のことを選手たちに聞いたら、みな異口同音に「メンタルが強くなった」と言います。選手を叱るときにはどんなことに気を付けていらっしゃいますか?

内野監督「僕は怒るときはめいっぱい怒ります。でも、例えば遠征とかで午前中の試合で怒られた選手は、午後の試合には必ず出す。午後の試合で怒られた選手は次の日の午前の試合には必ず出します。

怒られるのは期待しているからです。それで試合に出さなくなってはいけない。そうすると、怒られてはいけない、ということだけを気にする選手になってしまう。期待しているという姿勢は伝わらない。それではいけないのです。」

ーーーどのような時に怒るんですか?

内野監督「失敗を恐れてチャレンジしなかったときです。『100失点してもいいからこういうチャレンジをしてみろ』といってピッチに送り出す。ほんとに100失点したっていいのに、失点を恐れてチャレンジをしない。それはダメなんです。その時は本気で怒ります。『ミスしろー!』って怒鳴られてますよ、うちの選手は」

ーーー「失敗するな」と怒られるのではないのですね。

内野監督「失敗するな、って言われたら失敗を恐れて何もしない選手になりますね。僕、『どないやねん』っていつも聞くんです。そうすると、1年生の時は特に『すいません』って答えが返ってきがちなんです。

『すいません』って言ってる限りは絶対に怒るのをやめないです。だって、僕が彼らにしてほしいのは謝罪ではない。なんでこういうことが起きたのか、その時の自分の気持ちに向き合ってほしい。そしてそれを自分の言葉で語ること。それが大事なんです。

最初はわけがわかんない1年生たちも、怒られているうちに『すみません』じゃだめなんだ、ということがわかってくる。そこからですよ。どんどん問い詰めていくと、『相手にビビりました』とかいう返事が返ってくる。相手にビビってそこでチャレンジできなかった、ということに気づくんです。

失敗は、自分の中に絶対に理由があるんです。その理由を見つめて失敗の本質を認めない限り、決して上達はしません。人のせいにしたり、謝罪だけで終わらせていたら、その失敗が次回に生きることもありません。だから僕はそれに気づくまで怒るんです。

気づいて、自分で認めたら成功です。自分で自分の中の理由に気づいたら、そういう失敗はしなくなる。日本のスポーツにありがちな『Yes,Sir』ではだめなんです。それを学んでほしいんです。」

「感謝は思っていても伝わらない」

ーーー選手の保護者の方々にもお話を伺わせていただきましたが、みなさん口をそろえて「高校生になったら感謝の気持ちを息子が伝えてくれるようになってとてもうれしかった」とおっしゃいます。感謝の気持ちってどのように育てるのですか?

内野監督「親御さんへの感謝はずっと言い続けますね。

選手に計算をさせるんです。授業料が月々いくら、部費がいくら、遠征費がいくら…、そのくらいのお金が君たちにサッカーさせるのにかかってる、ということをまず認識させます。

そして選手に話をします。たとえば、大阪教育大を出て、学校の先生になったとする。そこでもらえる初任給いくらか知ってるか?と。知ってる生徒はいません。そこで『19万くらいだ』というわけです。君たちにサッカーをさせるためだけに親御さんがどのくらいのお金をかけてくれているか、比べてみろと。

また、興国高校のOBにアートコーポレーションの会長さんがいます。その方に協力していただいて、引っ越しの繁忙期に部員に3日間の就業体験をさせてもらいます。お給料もいただきます。

そして、3日間働いたお給料の中から2日分を春の遠征の費用に充てさせるんです。もちろん、2日間のお給料では遠征費はまかなえません。そこで子供たちは親のすごさに気づきますね。家族の生活費を稼ぎながら、自分にサッカーを続けさせてくれていることへの感謝が湧いてくる。特にトップチームは感性も高い選手が多いので、例外なく親に感謝し始めます。

親への感謝はしんどい時に頑張るエネルギーに代わります。人は誰かのために頑張る方が強いんですよ。

第98回高校サッカー選手権大阪府大会での興国のスローガンは『笑顔と感謝』でした。感謝を知っている人間は強い。そして笑顔のないところに成功はない、と思います。」

「『禁止』は指導者が楽をするだけだ」

ーーー興国高校サッカー部は総合的な人間力をつけるため、学校生活の充実も生徒に推奨しています。恋愛もOK、遊びもOK、というスタンスだと伺いました。サッカーを一生懸命やっている彼らにそんな時間はありますか?

内野監督「はい、土曜日にゲームを入れることによって日曜日はできるだけ休みにしてるんですよ。友達との関係は大事です。月曜日はミーティングなのですが、治療など体のメンテナンスに行きたい子はミーティングを休んで行ってよい、ということになっています。実質週休2日です。長期休暇は1週間オフにします。

感性は一つのことでは磨かれないから、サッカーだけやっていてはダメなんです。いい景色をたくさん見たり、たくさん遊んだり、ということから得られるものはたくさんあります。」

ーーー禁止、という規制が多いサッカー部もあると伺いますが、「禁止」にしていることはないんですか?

内野監督「禁止にして楽なのは指導者だけです。

だって、たとえば恋愛禁止にしたとする。それは、恋愛に夢中になって練習をおろそかにすることを防ぎたいからですよね。禁止にすればそれは確かに防げますよね。指導する必要もなくなります。

でも、彼らがプロになったら。あるいは大学生になったら。それらは解禁されるわけじゃないですか。禁止されていたものが急に目の前に来て身を持ち崩した選手はたくさん見てきたんです。だとしたら、恋愛禁止にするのではなく、恋愛OK、女の子とお付き合いする中で『どう付き合うか』『どうサッカーと両立させるのか、なんならプラスにするのか』が大事になってくると思いませんか?

社会に出たら誰も教えてくれません。だから、高校生のうちに指導する必要があるんです。SNSも同じです。禁止にしてしまえば、トラブルはなくなりますね。でもいつか禁止されていたことは解禁される。その時のことを考えたら、禁止にするよりも正しい使い方を教えるのが教育でしょう?と思うわけです。失敗したっていいじゃないですか。次の失敗防止に活かせばいい。大人になったら『失敗しました、すみません』じゃすまなくなるんですよ。」

最後に

取材が終わった後、内野監督は「プロになったらセルフマネジメントしなきゃいけないですからね。自分のプロデュースも含めて…。高校時代にできるだけ準備させてあげたいですね」とおっしゃっていました。

確かに、何も言わずに黙ってる人の気持ちは「わかれ」と言われてもわかりません。社会に放り込まれた時、周囲に感謝を言葉で伝えられる人と、思っていても感謝を言葉で伝えられない人、どちらが愛されるでしょうか?

「プロを出す」だけでなく、その選手がプロとして大成するためにということに着目し、本気で育てている学校だと感じました。

 

 

寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWS統括編集長/事業戦略部水下 真紀
Maki Mizushita
1974年生まれ。群馬県出身、東京都在住。フリーライターとして地方紙、店舗カタログ、webサイト作成、イベント取材などに携わる。2015年3月からジュニアサッカーNEWSライター、2017年4月から編集長、2019年4月から統括編集長/事業戦略部。ジュニアサッカー応援歴14年。

第98回高校サッカー選手権予選を最後に息子が引退。
高3の11月から受験生になりました。
高校2年生の保護者の方がもしここを見ていたら、
「たったの2か月でセンター爆上げは無理だから今からがんばれ」と
お子さまに教えてあげていただきたいです…

まだ小学生、中学生のお子さんをお持ちの皆様がうらやましいです。
今しかない瞬間、親も楽しんじゃってください!

サッカーにかかわるすべての人を応援しています。

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