Green Card ニュース

アマチュアサッカー情報を中心に結果速報や進路情報を掲載

保護者の悲観は子どもに伝わる!「控え」のわが子に言ってはいけないNG集

「控え」の選手が増えていく?

日本サッカー協会は「公式試合数を増加させ、試合によって選手が成長することを期待する」という方針を打ち出し、リーグ戦を増加させました。

その結果、以前は夏開催だった全日本少年サッカー大会が冬開催になり、予選の必要条件として通年リーグを必ず伴わなければいけないことになりました。

リーグ戦の増加がなぜ「控え」の選手をふやすことになるのか、また、「控え」になってしまったときにどうモチベーションを保つか、どうすれば控えにならないかについてまとめました。

photo:woodleywonderworks

リーグ戦増加の弊害?

「1選手年間30試合」

控え1photo:woodleywonderworks

チームが強くなるためには、最低どのくらいの試合数が必要でしょうか?

少年サッカーにおいては、チーム力の底上げとレベルアップを図るには、公式試合級の強度を持つ試合を1年に全選手が30試合行えばよいという見解があります。

しかし、公式試合で30試合を消化することができるのは、強豪チーム及び独自のリーグを持っているクラブチームに限られていました。

全日本少年サッカー大会の予選にリーグ戦を用いることにより、飛躍的に試合数が増えたことは確かです。

トーナメント戦は負けたら終わり。一つの大会で何回も試合ができるのは勝ち抜いていくチームだけでした。弱小と言われるチームはひとつの大会につき1試合しかない状態が続いていました。

その状態を打開し、試合数を増やしたことにより、理想とされる「1選手年間30試合」には近づいたはずです。

出場チーム数が減少?

控え2photo:faungg’s photos

試合数が増えたのは、全日の予選があるU-12世代だけではありません。新人戦と呼ばれるU-11の大会や、U-10以下の大会にも今年から予選にリーグ戦が登用された公式戦が増えました。

それはつまり、コーチ陣の帯同回数が増えたということにつながったのです。結果として、今まで2チーム登録(Aチーム・Bチーム)していた地域チームが登録を1チーム(Aチームのみ)にするという事態が起こりました。

そのため、わずかですが各都道府県で全日本少年サッカー大会の予選参加チームが減少しているようです。

2013年の日本サッカー協会のデータを見てみます。

4種登録の選手数は、31万8548人。チーム数は8668チームなので、1チーム当たり約36.7人の選手がいる計算になります。

しかし、登録されている監督数(4種)は、1206人。子ども約264人に対し、1人しかいない計算になります。この人数不足を補っているのが、コーチたちです。少年チームの場合には、選手の保護者が指導者になっている場合もあります。

コーチの人数は、級によってのデータはありますが、それぞれのコーチがどの年代の種別を見ているかのデータはありません。そのため、小学生年代を見ているコーチが何人いるかがわからないのが実情です。

試合数の増加に対して、慢性的な人手不足、指導者不足が起きているのです。

指導者が足りない?

控え3photo:USAG- Humphreys

指導者としてのコーチの級は、S級からD級まであります。日本全体では、S級からD級までの指導者資格を持つ人口は7万3555人います。登録チーム数は、全国で2万8533チーム。1チームに約2.6人の指導者がいる計算になります。

実際には、プロチームもこの数に含まれているので、4種の登録チームは2人の指導者がいればまずまずという感じではないでしょうか。

シニアや女子も含め、日本全体のサッカー人口は96万3340人(2013年度)。指導者資格を持つ人たちをサッカーだけで食べていけるようにするには、選手13人で指導者1人を支える必要があります。

それは実質的には難しい話なので、もちろんコーチと呼ばれる人たちも、兼業コーチが主です。休日を犠牲にして試合に帯同するには、「チーム構成員全員年間試合数30」は到底無理な話なのです。

それに加えて、2011年まで11人制だった全日の予選も8人制の大会になり、試合に出られる人数は減りました。

「控え」と呼ばれる、試合に出られない子が増加しているのは、

・試合数に対し指導者数の不足により、出場チーム数が減少
・試合人数の減少により、出られる人数も減少

という2つの側面があるのです。

4種登録数詳細はこちら(日本サッカー協会)
4種チーム登録数はこちら(日本サッカー協会)
指導者数についてはこちら(日本サッカー協会)
監督数に関してはこちら(日本サッカー協会)

「控え」でモチベーションを保つには

まず保護者が悲観しないこと

控え4photo:Bratislavska ?upa

控え、ベンチ要員、補欠、ベンチウォーマー…呼び方はさまざまですが、「試合に出られない」という意味では同じです。

全国的に「控え」の子が増えている現状があるということを、まず知っておいてください。「うちの子だけ…」ではありません。インターネットのネット上の相談掲示板を見ても、2012年度くらいから
・ずっとベンチで、モチベーションが親子ともに下がってしまったが、どうしたらよいか
・試合に出られない。チームを変わったほうが良いか

という相談が激増しています。

また、いまレギュラーである子も、「今だけ」の可能性は十分あります。上のカテゴリーに行けば行くほど、試合には出にくくなるのは当たり前です。プロになっても控えはあります。

中学生年代の第3種登録者は26万7049人(2013年度)。1学年8万9016人としてU-13日本代表に登録されるのは25名。わずか約0.003%です。その中で日本代表として試合に出られるのは11名。全体の0.0012%にすぎません。

いつかは誰もが控えになる。そういう可能性があるということを知り、保護者が先に悲観しないのも大事です。

保護者の悲観は子どもに移ります。「控え」で居続けることさえ、全然珍しくないことです。泰然と「時期」を待ってあげてください。

短期集中フットサル上達法

「今ではないだけ」という考えになること

控え5photo:Bratislavska ?upa

4種のカテゴリーがあるからか、U12で卒業という考えがあるからか、控えが続くと、一生出られないのではないかくらいに考えてしまいがちです。

小学生年代は、体の大きさがプレーに直接響いてきます。体重の軽い子は、ふっとばされてしまいますし、背の低い子はヘディングではかなわないなど、体格的にも体力的にも大きな差があるのが小学生年代です。

お子さんが一番輝く時期は、いつがいいですか?小学生年代がいいですか、それとも高校生くらいがいいですか?

もし、お子さんが「控え」を悔しがっているとしたら、「あなたの輝く時期は未来にある」と、目標を未来に据えさせてください。「いつ一番活躍したい?」と問いかけてみてください。

自分を信じて練習を続けていける道しるべになるはずです。

移籍も「あり」です

控え6photo:Bratislavska ?upa

試合に出られる方法はあります。チームを移ることです。日本ではチーム移籍は裏切り行為だと思われることが多いので一般的ではないかもしれません。

一般的に「移籍」というと、小学生年代では現在よりも強いチームに移動することが主ですが、この場合の移籍は違う意味です。

サッカーチームの目的は「勝つこと」だけではありません。「サッカーを楽しむこと」を目標としていて、負けようが勝とうが、とにかく試合には全員出すことを実践しているチームがあります。また、人数不足で下のカテゴリから常に人を借りてきているチームもあります。

もちろん、勝利からは遠くなります。「試合に全員出す」というのはそういうことです。

ですが、勝利だけが大切ではないことだってあります。試合の中で成長するタイプの子もいれば、「怖いから試合には出たくない」という子だっています。それは個性です。そして、個性も成長とともに変化していきます。サッカーをしているなら試合には出たい。そういう目的でチームを選ぶのもありです。

・一番下から這い上がりたい子
・一番上でのびのびとやりたい子
・サッカーは好きだけれど勝利至上主義ではない子
・どんなふうでもいいから勝ちたい子

お子さんの個性は様々です。一番お子さんを延ばす道は、一番個性に合った道であるのは間違いありません。

10歳からはゴールデンエイジと呼ばれます。肉体的にも精神的にも黄金期を迎えます。この黄金期に公式試合級の強度をもつ試合経験を持つのと持たないのでは、そのあとが変わってくる場合があります。

強いチームで鎬を削るばかりがサッカーではありません。強くなくても、みんなでできることを探り、今持っている力で戦っていくという経験も黄金期の大事な種まきになります。

「控え」のときこそ磨いておきたい向上心

10photo:Patrik Jones

中学生になって部活に所属すると、「先輩」という存在が必ずいます。もちろん、1年間はベンチウォーマーになることを覚悟する必要があります(スーパールーキーの場合は別です)。

「試合に出るために、どんな努力をしてますか?」

「試合に出るために努力したことがある」と答えた中学2~3年生に「試合に出るためにどんな努力をしたか」を聞いてみました。

「自分の好プレーを監督に印象付けるために、練習からアピールする。具体的には、シュートを決めたり、パスが通ったら大声で喜ぶなど」
「チーム内の紅白戦ではチームで一番強い先輩のマンマークにつく。抜けたらラッキーだし、やる気は買ってもらえる。自分だってうまくなる」
「片づけを積極的にやる。みんなが疲れているときがチャンス」
「人の悪口は絶対言わない。うちのチームで強い先輩は絶対言わないから」
「練習でも、ボールを取られたら必ず追いかけて取り返す。取り返せなくても次のプレーで取り返す。これを必ずやる。取られたボールに食いつかない人は試合には出してもらえないと思う」
「試合のときは、とにかく試合をよく見る。自分がマッチアップする相手の弱点、相手チームの穴、癖、特徴を見ておく。で、それを監督に聞こえるように隣の人と話す」

努力が報われたかどうかは別として、これらはみんな中学2~3年生が自分の頭で考えだした方法です。試合に出られないという状態は、「出たい」という気持ちがあるうちはずっと向上心と創意工夫に火をつけてくれるきっかけでもあるのです。

「控え」を出す決断はどこにあるか

スタメンの選手のスタミナが尽きかけています。試合も膠着状態で、嫌な雰囲気になってきました。押し込まれたら負けてしまうかもしれません。控えの選手の中から誰か一人を選び出し、ピッチに送り込む必要があります。

そんなとき、コーチや監督は何を考えて控え選手を選ぶのでしょうか?

実際のU-12の指導者に聞いてみました。

「どの控えを出すかは、今ダメになりかかっているスタメン、穴になっているスタメンのポジションにもよりますので、一概には言えません。が、同じポジションで複数の選手がいたら、一番試合をよく見ていた選手をまず出します。

これから出る選手は、僕の指示をピッチにもっていって、選手に指示をしてもらわなくてはなりません。その時に、試合を見ていなかったり、戦況が理解できていない選手では少し不安です。といっても、U-12で戦況をきちんと理解している選手は少ないので、これは理想論ですが…」

こんな意見もあります。

とにかく、出してくれ!と訴えてくるような雰囲気の選手から出しますね。すると、つられてほかの控えの子も一生懸命試合を見始めたりします。

途中から出す選手は、とにかく走ってくれとか膠着状態を打開してくれという気持ちで出すことが多いです。そのとき、やる気のない選手を出すのはチームにとってもマイナスです。張り切って出て行ってくれる選手を出したいです

控えの選手は、チームにとってはカンフル剤。その後の戦況を変えてしまう、大事な役割を担っているのです。

「控え」脱却!レベルアップの目安データ

控え9photo:J Brandt

そうはいっても、「スタメンで出たい」「試合に出たい」という気持ちはどの子も持っているでしょう。自主練の参考になるデータを見つけましたのでご紹介します。

少し古いのですが、1977年から1980年の間の全日本少年サッカー大会のデータをもとに、年齢別レベル移動距離を測った東京電機大学のデータがあります。

試合時間中の移動距離(平均)

小学生(全日出場):40分間3500m
中学生(全中出場):60分間6400m
高校生(高校総体):70分間8000m
ユース(1979FIFAワールドユース):80分間9200m
成人(日本代表):90分間1万700m

この距離を走りつつ、ボールを取り、体を寄せ、時にはトップスピードでダッシュをしなければならないのがサッカーです。基礎体力が大事なのは言うまでもありません。

小学生(全日)5分間の移動距離(平均)

FW:410m
MF:460m
DF:410m

MFのポジションは、ほかのポジションに比べて長い距離を走り続ける必要があります。瞬発力だけではなく持久力もかなり必要なポジションです。

平成6年度全国大会出場サッカー選手の体力平均値

hyou上記の表は、平成6年度に東京電機大学が行った調査の数値を一覧表にしたものです。

各項目の上の段は全国平均値を、下の段(水色)は全国大会出場チームの平均値を計測したものです。

赤字の部分は、全国平均よりも全国大会出場チームの平均値が高い部分を示します。背筋と垂直跳びに関しては、小学校年代のうちは全国平均のほうが高いことにご注目ください。

中学生になると、筋力が発達し始めます。小学校はまだ準備段階にすぎませんが、自主練等で頑張るときの一つの目安としてお使いください。

「控え」の子どもに言ってはいけないNG集

控え8photo:US Embassy Kabul Afghanistan

試合に出られない状態の子どもをスポイルすることは簡単です。ただ、今一生懸命這い上がろうとしている子どもたちを、言葉で折ってしまうことはしてはいけません。

ついうっかり言ってしまいがちなNGワードを集めてみました。

×試合に出られなくて悔しくないのか

この言葉のNGの理由は「ダメ押しになってしまうから」です。一番悔しいのは選手本人です。

スタメンに慣れなくて落ち込んでいるときには、サッカーの話題を避けるなどの工夫もいいようです。

×今のままじゃ、試合に出られないよ

これも、当人が一番よくわかっていることです。現状を語るよりも、どうすればスタメンに近づけるかの道を教えてあげましょう。ぜひ、前項の表を使ってみてください。「50m走があと○秒早くなれば全国出場レベルだよ」など、具体的な数値を示したほうがモチベーションを保てます。

×試合に出られるように頑張れ

「頑張れ」とは、明治維新以降の「富国強兵」が生んだ言葉だそうです。「我を張れ」から来たという説と「眼張れ(気を付けて見張れ)」という説があります。緊張を生んでしまう言葉として、現代スポーツのメンタルアドバイスの現場では使われない言葉です。

英語やドイツ語に、「頑張れ」という言葉はありません。

アメリカでは、「Take it easy(気楽にやって来い)」と送り出すのが一般的なようです。「have a fun(楽しんで)」ということもあります。

ドイツでは「フィール・シュパール(大いに楽しんで)」ロシアでは「デルジーシ(元気を出して)」などの言葉で保護者は選手を送り出すようです。

×あの子が休んだら出られるかもね

この言葉のNGの理由は「嫉妬心を育ててしまうから」です。チーム内にいるのは、ライバルであって敵ではありません。

敵を作れば「いなくなれ」というネガティブな方向に嫉妬心が向かいます。その途端、自分の成長はなくなってしまいます。

ライバルを作れば、嫉妬心が「乗り越えろ」というプラスの向上心に変化します。それは、自分自身の成長にもつながります。

「控え」の状態を上手に利用して自分の成長につなげていきたいものです。

最後に

日本サッカー協会の取り組みにより、世界で戦える日本になることを目標にサッカー界は年々変化しています。

リーグ戦を増やすのも、11人制から8人制にしたのも、「1選手あたりの試合数を増やし、1選手当たりのボールタッチ回数を増やす」という意図からなされているものです。

うまく機能すれば、日本のサッカーの底上げになることは間違いありませんが、過渡期のため「控え選手がたくさん出てしまう」という現状を生んでしまっているものと思います。

試合に出たい、という気持ちは誰しも同じです。「出られない」という状態をプラスに代えることができる力をお子さんは持っています。自分の成長のために悪いことばかりではありません。

ぜひ前向きに今の現状をとらえ、お子さんと話し合うときの材料にしてみてください。

寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWS統括編集長/事業戦略部水下 真紀
Maki Mizushita
群馬県出身、東京都在住。フリーライターとして地方紙、店舗カタログ、webサイト作成、イベント取材などに携わる。2015年3月からジュニアサッカーNEWSライター、2017年4月から編集長、2019年4月から統括編集長/事業戦略部。2023年1月からメディア部門責任者。ジュニアサッカー応援歴17年。フロンターレサポ(2000年~)

元少年サッカー保護者、今は学生コーチの親となりました。
見守り、応援する立場からは卒業しましたが
今も元保護者たちの懇親会は非常に楽しいです。

お子さんのサッカーがもたらしてくれるたくさんの出会いと悲喜こもごもを
みなさんも楽しんでくださいますように。

コメント欄

  • Comments ( 1 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. By 補欠制度を考える親

    違うね~。補欠の経験からレギュラーとの差は広がるばかり。試合に出るから上手くなるんです。私は社会人になって試合に出るようになってから上手くなりました。特にプロでない限り子供は試合に出るから気づきがあってモチベーションになるんです。辛い補欠の経験はありますか?セルジオ越後さんも補欠制度を廃止をうたってます。出る環境を作る事が親だとおもってます。

コメント欄

*

※ファイル添付機能が使用できるようになりました。推奨ファイル形式:png、jpg|PDFやExcelファイルは「[email protected]」宛にメールにてお願い致します。

Return Top