(この記事は再掲です)
あなたのお子さんのサッカーの夢は何ですか?
日本代表?ワールドカップ優勝?それとも、Jリーガー?サッカーコーチ、というお子さんもいるかもしれませんよね。
夢をもって続けられることなら、長く続けてほしいと親は願うものです。その願いを邪魔するものが、事故と故障です。
将来を嘱望されていながら、ケガ、あるいは故障によって、競技人生を小さいうちに終えた選手の数は、驚くほどです。
現在、スポーツクラブなどに勤務しているスポーツコーチの約半数近くは、若いころに優秀な成績を収めていながら、けがや故障でトップアスリートへの道を絶たれた人だとも言います。
この記事では、ケガ(事故)と痛み(故障)について、また、対処やケアについて、お話ししたいと思います。最後に、よいスポーツドクターの選び方も載せておきますので、お困りの方は参考にしてください。
- ケガ(事故)と痛み(故障)は別物です
- かんちがいNO.1!成長痛って?
- ケガの時の対処とは?
- ケガをしにくくするための方法
- 完治後のケアについて
- 「痛い」ことは悪くない
- 痛みの時の対処とは?
- 故障をしやすい子供の4つの特徴と故障をしにくくするための方法
- 故障のリハビリについて
- スポーツドクターのすすめ
photo:Donnie Ray Jones
ケガ(事故)と痛み(故障)は別物です
「ケガしたから痛い」と思っていませんか?これは、一緒にしてはいけない問題です。
○ケガ→「いつ起こったか」がわかる。転倒、打撲、ボールが顔に当たった、などです。骨折もこれに含まれます。事故、と言い換えることができます。
○痛み→「気が付くといつも痛い」という状態です。何が原因でおこったのか、いつからなのかは、本人にも周りの人にもわかりません。ただ、気が付くと痛かった、そういう状態です。これを、故障と言います。
ケガなら、だれの目にも、「今転んだ」「今当たった時に、骨が折れたかも」「今ボールが目に当たった」というのが見えます。なので、対処がすぐにできます。
厄介なのは、痛みのほうです。
ケガと痛みについての前に、ここで、ジュニア選手の保護者が陥りやすい「一般常識」にメスを入れたいと思います。
「痛み=成長痛」のワナです。
かんちがいNO.1!成長痛って?
photo:Michael Johnson
「ママ、足が痛い」とお子さんがやってきたとき、「あー、成長痛かもね。大きくなれば治るから大丈夫よ」と言ったことはありませんか?
「パパ、膝が痛い」と言ってきたときに、「成長痛だろう。そのうち治るさ」と言ったことはありませんか?
医学書を読んでみると、
成長痛とは、主に2歳から7歳までの小児に、夜間に起こる原因不明の下肢痛のこと
と書いてあります。
加えて、
10歳以降に成長痛はない
とも!
スポーツをしている少年少女が、10歳以降に「足が痛い、膝が痛い」と言ってきた場合は、それは成長痛ではなく、骨軟骨障害の可能性が高いのです。
骨軟骨障害は、「成長痛」と決め込んで、だましだましプレーを続けていると、気が付いたときには、ひじやひざの成長関節が壊れてしまう障害です。こうなってしまったら、激しいスポーツを続けることはできません。
特に、10歳以降と言ったら、身長が伸び始める時期です。お子さんによっては、第2次性徴も始まりますよね。親も子も、この時期の痛み=成長痛と思い込んでいる人が多いため、重大な疾患を見逃してしまったり、慢性的にダメージを重ねて行って、取り返しのつかないことになってしまう場合もあります。
「そういうけど、10歳以上だけど病院で成長痛って診断された」という人もいるはずです。
実は、成長痛という病名は、除外診断でつく病名なのです。
・レントゲン検査や診察の結果、明らかな異常がみつからない
・3か月以上の経過観察をしても症状が悪化しない
・炎症がない
これらの場合の痛みは、四肢痛の場合、「成長痛」と診断されます。なので、10歳を過ぎて「成長痛」と診断された場合は、「原因不明の痛みがある状態、けれど重篤な病気はみつからない」と言われたことと同じです。あくまで医師が判断することで、自己診断は危険です。
それでは、ケガ(事故)と痛み(故障)について、対処と対策、ケアについてまとめてみます。
ケガの時の対処とは?
photo:Jon Candy
ケガは、「今ケガした!」というのが見てわかります。ケガをした後も歩けるようなら、その日のうちに病院を受診すれば大丈夫です。ただ、以下のようなときはすぐに病院を受診してください。
・走っていて急に倒れた→すぐに救急車を呼び、意識がないようならAEDやCPRを行います。
AEDの使い方など、くわしいことはこちら
「10分間が生死を分ける!AEDを使えば防げるジュニア選手の死亡事故 」
・頭を打った後、吐き気がある→すぐに病院を受診しましょう。場合によっては救急車を呼びましょう。
・転倒した後、手足にしびれ、運動麻痺がある→脊髄損傷の疑いがあります。動けるようなら、病院を受診します。動けないようなら、すぐに救急車を呼びましょう。
・転倒後、四肢に大きな変形や腫れがある→骨折の可能性があります。すぐに病院を受診してください。
・目が出血したり、傷ができている
救急車は、場所によってはすぐに来ないこともあります。車で運び込むときには、あらかじめの電話連絡を忘れないようにしましょう。電話連絡しておけば、乗用車でも救急外来から入れてくれることもあります。
軽いケガなら、とにかく消毒です。サッカー場でのけがは、傷口に泥や砂が必ず入り込んでいると思いますので、十分に洗い流します。そのうえで、乾燥法や湿潤法などを使い、ケアをしてください。
ケガをしにくくするための方法
ジュニア年代前期(小学校1年生~中学1年生)までのケガで、圧倒的に多いのは骨折です。
この時期の骨は、縦に伸びることで精一杯です。そのため、細長く中が空洞のパイプ状になっています。横方向からの力にたいへん弱く、「すぐに折れる」くらいに考えておいて間違いありません。
が、この時期は骨を覆っている骨膜が厚いのも特徴の一つで、たとえ折れたとしても粉砕骨折になることは少なく、大人よりも速い速度で癒合します。
くっつきにくい鎖骨の骨折さえ、大人では癒合までに3か月かかりますが、子どもは2~3週間でついてしまいます。
骨折をしにくくするには、まず、骨自体を丈夫にすること。カルシウムの摂取は必須です。また、スネの骨は細いうえに折れやすいので、レガースは必ずつけてください。
また、サッカー少年の骨折でかなり多い割合を占めているのが、
「サッカー以外の場所で骨折した子が大変多い」
のだそうです。たとえば、家の柱に足の指をぶつけて骨折。学校で友達とじゃれていて倒れ、鎖骨にヒビ。公園の木から落ちて手首にヒビ。
痛みには個人差があるため、軽いヒビ程度だと、「なんか痛いな?」くらいで気が付かない子もいるといいます。そうした子が、普通に日常生活を送る中で、サッカーの練習に来て動かしてみると、「痛い!」ということが多く、そこで医者に連れて行って初めて骨折だとわかるケースが非常に多いようです。
骨折やヒビのある個所を動かすことが、より事態を複雑にしてしまいます。癒合しかかっている場所を動かすことにより、骨折の度合いが増すことも少なくありません。太い骨はわかりやすいのですが、足の指の骨など、細いところだと我慢できてしまうことが多いのです。
お子さん自身にも、痛いのは何かの危険信号だということをきちんと教えましょう。ぶつけたりしたあとには、自分で必ず気を付けて様子を見ることも大切さもお伝えください。
完治後のケアについて
病院に運ばれるほどの大事故なら、必ず医師のもとで定められたケアをきちんとすることです。
骨折は、治るまではじっと我慢です。腕のギプスをバット代わりにして野球をしたり、足のギプスを杖代わりにしてどのくらい早く階段を登れるかを競走している子を見たことがありますが、患部に衝撃を与えることは良いことではありません。
ただ、動かせない、サッカーができない、という状態がジュニア選手のストレスになることも確かです。
これはいいチャンスなので、動かせないほうと逆側を使うトレーニングを教えましょう。簡単なことでいいのです。腕だったら、反対側で食べたり書いたりする練習。
足だったら、松葉杖で体を固定しておいて、動かせる足でボールをける練習。後でも詳しくのべますが、いつもと反対の足を動かすことで次のけがのリスクを減らせます。骨折だけでなく、ねん挫でも同じです。
「痛い」ことは悪くない
痛みは、親にとっても嫌なもの。子どものボキャブラリーでは、どのくらい痛いのかさっぱりわからないうえ、いざ医者に連れていくと「今は痛くない」と平気で言い放ったりするからです。
お医者さんからも、「…痛いときに連れてきてもらえますか?」と言われたことがある人もいるのではないですか?
が、「痛い」と言うことを、絶対に我慢させないようにしてください。「簡単に痛い痛いって言っちゃダメ!」は禁句にしておいてください。
ある高校サッカー選手権に出場するような強豪高校のサッカー部は、とにかく先輩と後輩、監督と選手のコミュニケーションを大変大事にしています。
「痛いというSOSが出せないような環境だと、選手は我慢してプレーしてしまう。それは、高校サッカーの段階で、選手生命を奪ってしまうことにつながってしまう。
だから、すぐに不調や違和感を訴えやすいような環境にしています。休んだら干す、という一方通行のコミュニケーションは、選手の将来を奪うことになりかねない」
この環境を、ぜひ家庭にも取り入れてください。
痛みの時の対処とは?
「痛い」が、すぐさま重篤な症状につながることはありません。
まず、どこが痛いのかをはっきりと確かめます。「ここ?」と、痛みを訴える場所を軽く触りながら確かめてください。強く押す必要はありません。
そして、早めに近くの医師を受診してください。けがと違って、時間があるため、医師を選択することができます。
応急処置としては、
①圧迫
②冷却
③休む
④高く上げる(心臓より高く)
頭文字をとって、「あ、れ、やっ、た?」と覚えておきましょう。この初動対策をするかどうかで、ずいぶん変わってきます。
病院選びのポイントは、最後のほうをご覧ください。
痛みは、故障です。車にたとえては失礼ですが、車なら、故障しないように、普段から点検をしますよね。故障してしまったものは、メンテナンスをしますよね。体にもきちんとした点検と、メンテナンスが必要です。
次は、故障をしやすい子供の4つの特徴と故障をしにくくするための方法、リハビリ、スポーツドクターのすすめについてまとめました。
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