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コロナコミュ障って知ってる? 「対話の技術」で新年度を楽しくスタートしよう!ワンソウル(福岡市)「対話の授業」

「コロナコミュ障」という言葉をご存知ですか?
あるアンケート(※1)では10代の27.5%が「コロナ禍でコミュニケーション力が低下したと思う」と回答し、コミュニケーション能力に不安を抱えている実態が浮き彫りになりました。

「コミュニケーション能力が低下したと感じる理由」としては、「自信がなくなったから32.7%、やり方がわからない25.5%」という回答が寄せられていました。(※1 参照元 グローコム調査 https://www.atpress.ne.jp/news/327472

また、不登校の子どもが過去最高の24万人へと急増したというニュースもあります。
保護者としては大変気になる数字ですね。

そこで今回は、福岡市を拠点に活動するワンソウル.C福岡が実施している「対話の授業」をご紹介します。
これは、「対話」の専門家を招いてより良いコミュニケーションの仕方「技術」を学び、実践するミーティングです。
今回は中学1年生と2年生合同での実施でしたが、小学生と中学生、中学生と高校生、そして時には保護者も混じって、というようにさまざまなカテゴリーを超えて5年前から年に5,6回実施しているとのこと。

ワンソウル.C福岡代表の中田雄一朗さんは対話を学んで、実は監督である自身が一番変わったのだそう。
選手に対して、「断定しない」「意見を一つに決めつけない」ことで、選手からプレーに関する質問がすごく増えたといいます。

また「同学年と一緒に過ごすのは学生のときだけです。社会に出たら様々な年齢の人達と時間を共有していきます。「対話の授業」は社会に出て役立つことを今のうちから学べる機会でもあります。フットボールは団体競技なのでコミュニケーション力が自分の能力を発揮するためのカギとなります。さらに言うと人間関係を良好にすることで自然と素敵な仲間に恵まれ、豊かな人生を送る事につながれば」(中田監督)という思いがあるそうです。

実際の「対話の授業」を取材してきました。

ワンソウル.C福岡が行う「対話の授業」とは?

会議室にワンソウルの中学1年生,2年生選手30名ほどが集まり、「対話」の専門家である慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス Keio SFC 特任教授で津屋崎ブランチLLP 代表の山口覚氏がファシリテートする形で「対話の授業」が始まりました。

まずは山口さんから「対話」のルール説明です。

<対話のルール>
・「私たち」と思う
・耳を澄ませて聴く
・否定も断定もしない
・答えは1つと思わない
・アイディアをつなげる
・心の変容を許す

「否定も断定もしない」「心の変容を許す」というのがとても印象的でした。
「対話」とは議論やディスカッションなどとは根本的に違います。
意見を戦わせるのではなく「お互いの意見を受け入れ、お互いの違いを受け入れるためのコミュニケーション。
アイディアをつなげて1人では考えつかない発想にたどり着くための技術」とのこと。

そして、この日の対話のお題は「優勝するために 野球の日本代表にあってサッカーの日本代表にないものは?」でした。
まずは中学1年生、2年生が混じったグループ編成での「対話」が始まりました。

今日参加の選手たちは、小学生の高学年から「対話の授業」を年に5,6回受けているので、慣れた様子で話し合いが進んでいます。

「日本の野球には大谷みたいな世界的なスター選手がいる。でも日本サッカーにはメッシのような世界的なスターがいない」
「日本人はお箸を使う。だから足を使うサッカーよりも、手を使う野球の方がスポーツ的に向いてるんじゃないか」
「野球の日本代表の方がメンタルが強いような気がした。(自分達は勝てるという気持ちが強い)」
「野球選手の方が体格がいいと思った。筋力などのポテンシャルが野球選手の方がいいのではないか」

このような、さまざまな方向からの意見が飛び交っていました。

一通り意見が出たところで、グループをシャッフルします。
グループの中のファシリテーター役だけが残り、それ以外のメンバーは他のテーブルに移動します。
そして、そこのメンバーに「自分のテーブルではこんな意見が出ました」と共有し、アイディアの交換を行います。

その後、もう一回最初に自分がいたテーブルに戻り、2つめのグループで仕入れてきた「新しい意見(アイディア)」を伝え合います。
こうして最初の自分のグループにはなかった新しい視点でのアイディアを共有します。

「あ!その話、こっちのグループでも出てた!」
「なるほどなるほどー!」
「え、それってどういう意味??」「えーと、これこれこういうことで・・・」
「それってこれと同じ意味のことじゃない!?」

などなど、この「他のグループで仕入れたアイディアを持ち帰って共有」したときが、一番盛り上がっていました。

マインドマップのような図解が自然に出来上がるグループや、絵で説明する子。
新しいアイディアの発見に笑ったり目を輝かせたり。
全員が活き活きと対話に加わり、話す方も聞く方も身を乗り出して参加していました。

休憩時間に、参加者にお話を伺いました。

中学2年生 嶋田徠希くん(GK)
Q:活発に発言していましたね?学校でも意見を交換する機会はありますか?元々たくさん発言するタイプだったんですか?
嶋田くん
「うーん、意見交換するような時間はあまりないですね。生徒会とかの時くらいですかね。元々はどっちかというと学校でもサッカーのチームでも隅の方で休憩時間も本を読んでいるようなタイプでした。でも、今は面白そうな話題だなと思えばその話の中に入っていきます。対話の授業は、最初の頃はぎこちない感じで、自分のこんな意見を言ってもいいのかなと思ったりもしましたが、今はどんな意見を言っても否定されないと分かっていて、安心感があるのでたくさん発言できます。話すのは気持ちいいです、みんながしっかり聞いてくれるから。」

Q:サッカーでも何か変わりました?
嶋田くん
「僕はゴールキーパーをしているんですが、後ろから、どんどんみんなに声をかけるようになりました。試合中のコーチング的な声かけですね、たくさんできるようになりました。」

「話をするのが気持ちいい」という言葉が印象的でした。
確かに、みんな顔がイキイキとして「話し合いをさせられている」感がありませんでした。
思春期真っ只中の男子中学生が「対話を楽しんでいる」という雰囲気がとても微笑ましかったです。

また、「先輩後輩」関係の1年生2年生が混じっているはずなのですが、どの子が1年生でどの子が2年生なのか全くわかりませんでした。
それくらい、学年の垣根が感じられない良い雰囲気でした。

この後、対話の授業ではさらに考えを深める時間として「接続詞を4つ使って自分の意見をまとめ、発表する」ということが行われ、何人かがみんなの前で発表し、終了しました。

ファシリテーターを務めていた山口さんにお話を伺いました。

対話の授業 講師/ファシリテーター
慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス Keio SFC 特任教授で津屋崎ブランチLLP 代表の山口覚氏

Q:コロナ禍を経て、子どもや若者のコミュ力や対話には変化がありますか?こうした対話の機会を設ける意義はどんなところにあるのでしょう?
山口さん
「間違いなくコロナの影響はあります。子どもたちと接していても、大学生と接していても感じますね。授業以外のところで生徒同士がコミュニケーションをとることが極端に少なかった数年でしたから。

特に学校生活だと「黙食」が大きな影響があったと思います。

全体的に子どもたちが大人しくなっている。大学生でいうと、大学生らしくない。高校4年生5年生、という感じを受けますね。
物分かりが良すぎるくらい良い、そして幼い、優等生という印象です。
お互いに主張できないというか。
ここ数年は主張できるような機会がそもそもなかったんですよね。

ですから、こうして敢えて対話の場を作ることがとても重要です。
見ててもわかると思いますが、すごく楽しそうだったでしょう。
本来、対話とは楽しいことなんです。

こういう場を作って、何回も対話の技術を学んで実践することで、その子の日常会話が変わっていきます。
他人の意見を否定しないことで、その子を見る周りの目も変わる。
そうすると人やアイディアが集まってきますし、その子の器が大きくなっていきます。
こうした対話を実践すると、一段大人になりますね。

監督の中田雄一朗さんは「5年前に対話の授業を取り入れてから、試合中に選手同士のコミュニケーションが明らかに増えた。保護者からも思春期の子どもが良く話をしてくれるようになったと言われます。もっと多くの人に対話の技術が広がっていくといいですね」と語ってくれました。

最後に

「マスクの着用は個人の判断」「コロナを5類に」など大人の世界では「コロナ禍後の世界」へと方向転換がはかられていますが、数年に渡りマスク生活を強いられてきた子どもたちのケアは置き去りになっているようにも感じます。

子どもたちが安心してコミュニケーションが取れ、そしてコミュニケーションの楽しさを感じられるような取り組みが広がって欲しいと思いました。

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寄稿者プロフィール

JUNIOR SOCCER NEWS統括編集長/オウンドメディア事業部mar
長野県生まれ、現在福岡県在住。WEBライター歴10年。主に引越しや子育て、教育分野のコラムを100記事超執筆。
2016年11月からジュニアサッカーNEWSライター。
ジュニアサッカーNEWS副編集長を経て、現在統括編集長。

早いもので小学生のサッカー少年だった息子も高校生。
カテゴリーが変わるたびに、さまざまなサッカー観戦の仕方を知りました。
アマチュアサッカー、奥が深い!
そして、いつだって保護者の熱意がすごい!

選手や保護者の皆様から元気をもらっています。
少しでも還元できるように頑張ります。

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