[10.31 選手権富山県予選準決勝 富山一高 2-0 不二越工高 高岡スポーツコア]
第105回全国高校サッカー選手権富山県予選は31日、高岡スポーツコアで準決勝を行い、富山一高が不二越工高を2-0で下した。前半にセットプレーで2ゴールを奪うと、80分間を通して夏冬県内無失点が続く堅守で完封。伸び代を残しながらも堂々の戦いぶりで、2年連続36回目の全国出場に王手をかけた。
勝敗を分けたのは絶対王者のセットプレーだった。富山一は夏の全国インターハイでベスト16入りを成し遂げたが、1回戦・帝京大可児戦と2回戦・市立船橋戦は0-0のPK勝利で、3回戦で日章学園に0-1で敗戦。3試合ノーゴールに終わっており、得点につながりやすいセットプレーには大きなこだわりを持って3か月間を過ごしてきた。
「レベルが上がれば上がるほどセットプレーの重要性は増してくるし、そこで一つ違いを作れるとしたらヘディングなんじゃないかなと思っている」(富山一・加納靖典監督)。この日は風上に立った前半のうちにスローインやCKを立て続けに獲得。持ち前のフィジカルを活かし、空中戦からのヘディングでゴールを重ねていった。
まずは前半5分、今大会初先発を果たしたDF今村颯(2年)のロングスローが起点となった。最初のスローは「思ったより飛ばなくて」(今村)相手に弾かれたが、DF小川将輝(3年)が競り勝って二次攻撃をスタート。加勢した今村もヘディングでボールをつなぎ、最後はペナルティエリア内に入っていたDF坂井瑞基(3年)が頭で押し込んだ。
坂井は加納監督が「彼はセットプレーでよく点を取るんですよね」と認める嗅覚の持ち主。坂井自身も「ヘディングでは負けない自信があったし、そこで勝てたのはいい流れを持っていけると思った。しっかり準備していたので反応できた」と自画自賛の一撃だった。
さらに前半19分、次は敵陣右サイドで獲得したFKをMF辰巳遼太主将(3年)がゴール前に入れると、頭で合わせたのはFW宮本悠貴也(2年)だった。「宮本は身長はそんなに高くないけど空間認知が良くて、点数が取れるところに入ってきてくれる」(加納監督)。宮本はこのゴールシーンで腰を痛めFW山下大輝(3年)との途中交代を強いられたが、チームを優位に導く大仕事となった。

全国初出場を目指す不二越工の和田高汰監督は2012年度に全国選手権出場を経験している富山一OB。「セットプレーはもちろん警戒していたけど、前半は向かい風というのもあって処理が難しかった。取り組んできたことだったので余計に悔しいけど、そこをちゃんと点にしてくるのが一高だなという印象」。わずかな隙を逃さずに2点を重ねた母校の“飛び道具”に屈する形となった。
それでも不二越工は下を向かなかった。高い技術と強烈なメンタリティーを持つ背番号10のFW能登翔太郎(3年)にボールを集め、反撃のカウンター攻撃を模索すると、前半30分にビッグチャンス。DF城瑛士(3年)のロングフィードを能登が頭で落とし、FW大西真翔(3年)とのワンツーから能登が右サイドに送ると、MF平垣琉翔(3年)の折り返しが良い形でゴール前に入った。
そこでは結果的に富山一のリスク管理が優り、シュートには至らなかったが、鮮やかなカウンター攻撃は練習の賜物だった。「もちろん自陣でブロックを引くシーンもあったけど、どうやって攻撃に転じるかのトレーニングはかなりやってきた。ショートカウンター、ロングカウンターという形でただ一辺倒にクリアして守る展開じゃなく、どう攻撃に転じるかをチャレンジしてきたのでそこは出せた」(和田監督)。不二越工は2点ビハインドながらも、引かない姿勢を持ってハーフタイムを迎えた。
風上に立った後半は不二越工がさらに気迫を見せた。試合再開から能登が“キックオフシュート”を狙い、チームのファーストシュートを記録すると、直後にはFW清水瑛士(3年)も果敢にシュート。その後は能登がセットプレーのキッカーも務めるなど、背番号10の強烈なリーダーシップで富山一に食らいついた。
しかし、ここで崩れないのも富山一だ。前半から果敢なデュエルを仕掛けていた大型ボランチのMF岩田将英(3年)がさらに迫力を出し、局面でことごとくボールを狩り取ると、MF井澤哲平(3年)が献身的な上下動でサイドチェンジの受け手に。小川やDF大矢健人(3年)の鬼気迫るカバーリング、GK大坪佑誓(2年)の安定したキャッチングもあり、不二越工に決定機を作らせない。後半13分のFW米本琉人(3年)の決定機はGK長徳勇人(3年)のファインセーブに阻まれたが、着実に主導権を手繰り寄せていった。
すると時間が経つごとに富山一のペースになり、終盤は再び一方的展開となった。後半38分の米本の決定的なシュートはまたもGK長徳に阻まれ、同39分の井澤のクロスもGK長徳に触られたことで途中出場FW西嶋粋(3年)のシュートがクロスバーを叩くなど、中学校からサッカーを始めたという不二越工守護神の活躍が目立つ形となったが、富山一は優勢のまま2-0でタイムアップを迎えた。
富山一は2年連続の決勝進出。一昨季の県予選で龍谷富山に4失点を与えて敗れた鬼門の準決勝を突破した。それも夏のインターハイ予選から、県内では7試合連続の無失点。ただ単に失点リスクの低い守備ブロックを組むのではなく、前線からのアグレッシブな守備で相手にボールを持たせない戦いが光っている。
それでも今のチームに慢心はない。高円宮杯プリンスリーグ北信越では同様のスタイルを続けているが、目標としていたプレミアリーグプレーオフ出場権の優勝は厳しい状況。天王山となった今月3日の松本U-18戦(●0-1)を始め、直近3試合で6失点と失点がかさんだことで勝ち点を落としていたからだ。
「そこ(前線からのプレス)がうちのストロングだと思ってはいるけど、リーグ後期ではそこをすごく狙われていた。前から行けば行くほど後ろのスペースも与えるので、怖さも持ちながらいかに精度高く前からいけるかというところ」と加納監督。昨季選手権では大津相手に善戦し、終了間際の失点で敗れた苦い経験も残る中、プレミア・プリンスレベルのチームが並ぶ全国大会に向けてはより柔軟なイメージを持って突き詰めていく構えだ。
「サッカーは相手ありき。対戦相手との力関係を考えた時、全国に出た時はうちが押し込んで圧倒していくような試合はほとんどないし、深く守ってカウンターとかセットプレーで点を取れるようにというのが重要になってくる。一方で富山県内ではどちらかというとボール保持をしながらやっていく展開が多いので、その中で相手にスペースを与えずにいかに得点機を作っていけるかが課題になることが多い」(加納監督)
いまは県内仕様の戦い方を徹底しながら、全国を見据えて地道なレベルアップを目指す。「決勝に向けてしっかりとスカウティングをして対策をするという部分と、子どもたちには常に言っていますけど、成長することがすごく大事。相手に合わせた対策だけが成長のために大事なわけじゃないので、いまできているストロングを伸ばすこと、できていないことをこの1週間でどこまでできるか」(加納監督)。ミッションは県制覇と成長の両立。絶対王者・富山一は地に足をつけたまま1週間後の決勝・高岡一高戦に臨む。
(取材・文 竹内達也)
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