
[6.28 東京都U-18リーグ1部第10節 国士舘高 1-1 多摩大目黒高 国士舘大学町田キャンパスグラウンド]
名将が指導4校目となる国士舘高(東京)も予選突破へ導き、インターハイに挑戦する。国士舘はインターハイ東京都予選(全国大会出場枠2)で大成高や駒澤大高を破って決勝進出し、2位。17大会ぶり3回目となる全国大会出場権を獲得した。
1947年生まれ、指導歴50年にも及ぶ本田裕一郎総監督は習志野高(千葉)をインターハイ日本一、流通経済大柏高(千葉)をインターハイ、全国高校選手権、全日本ユース(U-18)選手権、プレミアリーグで日本一に導いている名将。これまでその2校に加え、初任の市原緑高(千葉)の指揮官としてもインターハイに出場しており、今回の国士舘で4校目となる予選突破だ。
本田総監督は国士舘での指導7年目。これまでの3校よりも全国大会へ行くことが「難しい」と語っていた。国士舘は2018年度に選手権出場を果たしていたが、流経大柏でプレミアリーグ、選手権を戦ってきた本田総監督の求める基準に未たない状況でスタート。「リフティングから始めて、少しプレッシングを教えて……」と振り返る。
また、自分の思い通りにいかないと落ち込んでしまったり、人のせいにしてしまうような選手が目立っていたようだ。本田総監督は「それでは上でできないよ」「ミスなんか誰でもあるんだから」と問い掛け続けたという。今年のチームもその課題がなかった訳では無いが、1人1人と対話した結果、少しずつ謙虚さや「チームとしての一体感というか、そういうものはかなりついてきた」(DF加藤璃久主将/3年)。
選手たちは普段、指揮官から褒められることが少ないという。ただし、予選準決勝で延長V弾を決めているMF洞澤慎太朗(2年)が「そこも怒られるんだ、とかあるんですけど、(求められるものが高いからこそ)ちゃんとやんなきゃみたいな感じで強くなっています」と分析する。満足することなく、より高いレベルを追求してきたからこそ、力が身についてきた。苦しかったという状況でも地道に指導を続けてきた本田総監督の情熱に加えて、昨年の1次トーナメント初戦敗退を知る選手たちの勝利への思いの強さや、上野晃慈監督らスタッフ陣のサポートもあってついに激戦区・東京都予選突破。祝福の電話を多数受けたという本田総監督は「皆さんのお陰ですよ」と微笑んでいた。

6月28日には東京都U-18リーグ1部第10節で多摩大目黒高と対戦。前半は前からのプレッシングが機能し、高い位置での奪い返しからFW小網咲人(3年)やMF洞澤慎太朗(2年)、MF百瀬利生吾(2年)がゴールに迫った。
また百瀬、MF舟見優一(2年)の両翼のドリブルやコンビによる崩しでセットプレーを獲得。だが、百瀬がカットインから放った右足シュートや右SB渡邊賢(3年)のクロスから舟見が狙ったヘッドが多摩大目黒GK池田航大(3年)のファインセーブに阻まれてしまうなど1点が遠い。
前半36分に百瀬が右サイドから撃ち込んだコントロールショットもGK池田のファインセーブに阻まれると、セットプレーの流れから186cmCB加藤がDFを剥がして上げたクロスなども得点に結びつけることができない。
逆に多摩大目黒のサイド攻撃を受け、前半44分にはMF山岡莉人(3年)に切り返しからの右足ミドルを枠に飛ばされた。これは怪我のGK菱田詩太(3年)に代わって初先発したGK梅木琉愛(1年)が対応。雨中で難しい試合展開の中、国士舘は加藤が相手のロングボールを圧倒的な高さで跳ね返し、CB福永大翔(2年)もほぼ隙を見せずに守っていた。
すると、後半5分、国士舘は右サイドの渡邊が中央方向へ斜めのパス。ニアの小網がスルーすると、その先にいたFW上田拓海(3年)が絶妙なファーストタッチでPAへ侵入する。そのままGKとの1対1を右足シュートで制した。
先制した国士舘はMF坂野来斗(2年)と洞澤のダブルボランチが奪い返しで貢献し、左SB肥田斗真(3年)の配球などからハイサイドを突く攻撃。俊足FW小網が鋭いドリブルでゴール前へ侵入しようとしたほか、やや下がり目の位置で崩しに係る上田が右足ミドルや裏抜けで追加点を目指す。
だが、雨中で切り替えの回数が増えてしまっていた国士舘は、試合終盤に掛けて全体の運動量が低下。中盤の攻防で奪い切れず、遅れてファウルするようなシーンが増えてしまう。多摩大目黒に再三攻め返され、シュートまで持ち込まれてしまっていた。
国士舘は加藤が守備範囲広くカバーしたほか、39分、41分と相手の決定的なシュートをGK梅木がファインセーブ。何とか凌ぎながらチャンスも作っていたが、MF小林亮太(3年)とMF永田拓也(2年)を投入後の45+3分に追いつかれた。国士舘は敵陣でのCKを合わせることができず、多摩大目黒のロングカウンターを受けてCKを献上。すると、MF藤島陸(3年)の右CKをMF塚田悠(2年)に押し込まれ、1-1の引き分けに終わった。
国士舘にとっては、試合の終わり方を含めて課題も残るゲームに。ただし、本田総監督は「伸びしろはいっぱいあるので。まだこのあと1か月あるでしょう。ちょっと合宿やったりなんかするので、もうちょっと上がると思うんですけど」と期待を寄せる。
本田総監督は「ワールドカップを見ていても地域差がなくなってきている」と語っていたが、国士舘も強豪校と渡り合う力を有している。加藤が「(出場校は)プリンス(リーグ)、プレミア(リーグ)のチームが多いと思うんで、都1部ってなると他の高校から下に見られることが絶対多いと思うけれど、そういうところで自分たちがチャレンジャーっていう意識を持って、どんどん上のチームを倒していけたらいい」と意気込んだように、選手たちも東京都1部リーグの自分たちがプリンスリーグ勢やプレミアリーグ勢を破るという野心を持っている。
インターハイは、昨年度の大会で前橋育英高(群馬)を破っている高知中央高(高知)と初戦。攻撃の要である快足FW小網は「まず1回戦が大事な試合になるんで、そこでいつも通りのプレーをするのと、あと点を取れるようにしたいです」と力を込める。
また、2回戦ではプレミアリーグ勢で、本田総監督の習志野監督時代の教え子たちが指導陣に名を連ねる昌平高(埼玉)が待ち構える。さらに互いに勝ち上がれば準々決勝で市立船橋高と対戦する可能性のある組み合わせ。かつて、ライバルの市立船橋と好勝負を繰り広げてきた本田総監督は「ベストエイト。市船とやりたいね」。国士舘は高校進学後初めて全国大会を戦う選手ばかりだが、ここから1か月間での成長と、指揮官の経験値も力に躍進を果たす。
(取材・文 吉田太郎)
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